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「季節を抱きしめて」ショ−トストーリー
「真実は・・・」
作:KAZ
僕はその問いに答えてしまった後、後悔した。もっと他の道が在ったのではないかと。
『あなたも私を騙すのですね。』
麻由がそう言った。静かに、そして機械のように無機質な声で。
(これでいいんだ。これで麻由が解放されるなら。でも・・・)
『あなたを連れて行きます』
(やっぱり言ってしまおう。後で後悔するよりは。)
「ごめんな、麻由。ぼくも嘘なんかつきたくはないけどこれで麻由が呪縛から解放されると思ったからなんだ。」
「僕が部屋を借りている家のお姉さん、知ってるよね。そのお姉さんが言ってたんだ。悲恋桜の伝説は間違いだって。
それで、ぼくはちょっと気になって調べてみたんだ。」
「学校の図書館には悲恋桜に関する本はあまり多くはなかった。その中でぼくは一番古い本を取ってみた。
本の内容は悲恋桜に関した伝承やうわさが事の真偽は別として書いてあった。
ざっとその本を見た後、その本の表紙と1ページ目の間に一冊のノートが入ってたんだ。」
「そのノートは日記のようだった。その日記は四月十五日から始まっていた。
その日には、悲恋桜の下で女の子に出会ったこと、
その日記を書いている人の片思いだった人に似ていること、が書いてあった。」
―――四月十五日――――――――――――――――――――――――――――――――――――
今日は青く晴れ上がってとても良い天気だった。そして今日はひとつ事件があった。
まだ花の咲かぬ悲恋桜の下で彼女が倒れていた。私は内心どきりとした。彼女の顔
があの子の顔にそっくりだったからだ。
三年前、まだ私が高校生であの子と同じクラスだったころ。あの子は死んだ。私は
その子が好きだった、片思いだったが。気づいた彼女はお礼を述べて帰っていった。
せめて名前だけでも聞いておけばよかったのだろうか。いや、そんなことをして何
になる、ただあの子の幻影をおいかけているにすぎないのだから。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「僕は驚いたよ。なんたって、僕が麻由と会った時のこととほとんど同じ事が書かれていたんだから。」
「それから後のページは毎日、四月十五日に出会った彼女のことが書いてあった。それから、
また彼女に会ったこと、彼女の名前があの子に偶然同じなこと、それからの数日間の生活についてが書いてあった。」
「見ているうちに僕はおかしなページを見つけた。」
―――四月XX日――――――――――――――――――――――――――――――――――――
今、日記を書いている。時刻は五時半。私はいつもは眠る前に日記を書く。普通な
ら早過ぎる時間だ。しかし、これには訳がある。彼女に頼まれたのだ。人に頼まれ
て日記を書くというものはおかしいのだが、彼女が言うのだ「”もしかしたらもう
その日記、書けなくなるかもよ。”」、と。まあ何かの冗談だったらそれはそれで
良い。さて、そろそろ悲恋桜へ行かなくては。彼女が六時までに来てくれというの
だ。何なのだろうか。まあ、行ってみればわかることだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「この次のページのから後はすべて白紙だった。つまり、日記の中の彼女が言った通りになってしまったわけだ。
この日記の持ち主に何かあったのではないか。そんなことが心の中に浮かんだ。それが僕の心に不安を生んだ。」
「いや、日記が終わっているのは”ただの書き手の気まぐれじゃないか”。そんな考えでが浮かんだが、
それもすぐに今も生まれ続ける不安に押しつぶされていった。
どうしようもなくなった心を落ち着かせるために僕はさっきの本を手に取った。」
「僕は本を落としてしまった。僕の手が震えていた。
(落ち着け。こんなのただの書きかけの日記じゃないか。)
僕は本を拾おうとして、本の、開いたページに目が止まった。」
「悲恋桜の伝説やうわさについてまとめてあるページだった。」
「悲恋桜のほとんどの伝説はデマや本当の伝説が語り継がれる間に変化し出来上がっていたものらしい。
そして調査で出所のわからなかった伝承が本当の伝説なのではないかという考察が書かれていた。」
「その本当の伝説とは、麻由の言う通り僕がさっき答えたやつじゃない。
恐ろしい怨霊の話だった。そう、桜の木に捕らえられた魂は人の血で花を咲かせることで呪縛から解き放たれる、というね。」
「僕はもう何がなんだかわからなくなった。
これが本当なのか嘘なのか、もう少し考えていたかったけどバイトがあるし図書館から出てバイトに向かった。
バイトの時もあの事が頭から離れなかった。」
「このままじゃ仕事も進まないし、しょうがないから家に帰ったらあんなことになってた訳さ。」
「ウッ」
痛みは唐突に襲ってきた。周りがゆがんで見える。麻由がどんどん離れていく。麻由が今にも泣きそうな顔で追いかけてくる。
僕は微笑んで大丈夫なことを伝える。
そして回りは暗闇に包まれた。
そこはじめじめした洞窟のような感じだった。
何かに体を縛り付けられている感じだ。人の腕ぐらいはある、もっと硬い何かに。
からだから力が抜けていく。
ねむい、とてもねむい。今にも ねむ て し ま い そ う
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「こんばんは。 ニュースビジョンの時間です。
今日のトップは桜の老木から死体発見のニュースです。
これはN県桜樹町の大学構内の台風によって桜の木の中から死体が発見されたもので、
死体は死後4年以上経っていると見られています。
しかし、死体には腐敗やミイラの様になっている訳ではなく、生きているようにきれいな事、
また、なぜ、どうやって死体が木の中に入れられたかなど、なぞは深まるばかりです。
それでは次のニュース・・・・」
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