日記、毎日の出来事や感じたことを書き記すもの。
僕は面倒な事は好きではないので日記は小学校の宿題ぐらいしかした事がない。
その僕にとって縁の無い日記が僕にとって大事な事を教えてくれるものとは思いもしなかった。
日記、それは必ずしも良い思いでばかりが書かれている訳ではない。
ダブルキャストロングストーリー
「日記」
主人公。
夏、七月下旬、大学は夏休みに入り僕は高校時代からの親友である二村と映画研究会、略して「映研」の部室でだれていた。
今年の夏はものすごく暑い。
平均気温が三十度を超えるのもしばしば。
大学の施設の中で古びたプレハブを部室としている我が映研は冷房設備など無く室内温度が三十度を超えていた。
この部室の唯一の窓は南向きで窓を空けてもほとんど意味が無い。
窓を空けカーテンも閉めず直射日光が部室に入り込む。
焼け付くように熱い。
しかし冷房の無いこの部屋で窓を閉め日よけに上映用暗幕など閉めた日にはちょっとしたサウナルームの出来あがりだ。
こんな熱い室内で馬鹿みたいに汗を掻きながら机の上でうなってる僕と二村。
現在三人しかいないこの映研で僕達がこの部屋にいなければ誰が映研の部活動をすると言うのだろうか。
と言っても部室にいるだけで何もしないけど。
開けっ放しにしているドアの方からこちらに向かう足音が聞こえてくる。
飛び上がる僕たちふたり、待ちに待ったものがやってきたのだ。
「お待たせー買ってきたよー。」
ラクトアイスがいっぱい入ったコンビニの袋を片手にめがねをかけた女のこが部室に入り込む。
この映研最後の部員、翔子ちゃんだ。
木のスプーンを片手に黙々と彼女が買ってきたアイスを黙々と食べる僕達三人。
映研を開いてはや1年、今年になって部活動はこんな感じで過ぎていった。
僕と二村、翔子ちゃんは高校時代からの三人組みである。
高校の時も映研を開き一緒に製作活動をしていた。
高校時代は部員も大勢いて活気があふれていた。
あの頃はいろいろな作品を制作したりした。
そのころの作品として「ダブルキャスト」とか「季節を抱きしめて」とか、あと「サンパキータ」「雪わりの花」とかいろいろと、高校時代の三年間でよくぞこれほどの数を作れたものだと感心したぐらいだ。
とはいえ僕達はその頃はもっぱら雑用、これらのシナリオとかは先輩か書いたものがほとんど。
でも「雪わり」は僕ら高校時代の最後の作品、僕ら三年を筆頭にそれは有意義な部活生活だった。
それが今となってはこの始末。
二村と翔子ちゃんとは大学が同じだったので映研を続けようとしたが、いかんせんこの大学には映研は無かった。
どうにかこの学校の隅にあるプレハブを借りる事に成功し、映研をはじめたものの部員は結局は集まらなかった。
部長は僕、面倒事を押し付けられた。
二村はカメラに翔子ちゃんはメイクに専念したかったようだ。
でも部員がいないもので映研を開いても撮影は出来なかった。
去年の文化祭はレンタルで借りた映画の上映会。
それと僕らの映画に対する感想文の展示など、これでもかと言うほどつまらないものだった。
有名人とかテレビに出ているような映画研究家などが書いた論文ならともかく、僕らのような名の無い映画マニアの書いたつまらない文章など誰が読んでくれようか。
山のように買ってきたアイスを全て食べ終える。
一時の清涼感を心地よく感じる僕ら三人。
「映画・・・・・・・・・・・・作りたいよな・・・・・・。」
ポツっとつぶやく僕。
それに同時にうなずく二村と翔子ちゃん。
高校時代の「雪わり」から2年、こんな腐った部活生活をしている僕ら三人だがやはりそろそろ新しい作品が作りたかった。
シナリオは出来ている。
題名は「スキャンダル」、「サンパ」以来のハードボイルドだ。
と言っても・・・・・・・・役者がいない。
この学校に演劇部はある。
が、彼らは彼らで大変なのだ。
大学レベルとなると本格的だ。
まじで役者志望もいるぐらい。
せめて今回の作品「スキャンダル」のヒロインに似合ったセクシーな女のこがほしかった。
夕方六時、居酒屋で飲み会を開いている僕ら三人。
アイスを食べ終わった後しばらく部室にいて、その後居酒屋で飲み始めた。
もっぱら会話は高校時代は良かったと言った情けない会話。
女のこの翔子ちゃんの前でセクシーな女のこの部員がほしい、などの会話等が飛び交う。
翔子ちゃんは翔子ちゃんで自分は役者志望じゃないと言うこともありあまり気にしていないみたい。
もし彼女に「スキャンダル」のヒロインをやらせてもイメージが合わないだろう。
翔子ちゃんは拳銃とかを持つ役よりもどちらか当いえば
「季節」の麻由役のほうが無難な感じはする。
「彼女がいてくれればなー」
と言い始めたのは二村。
彼女、名前は言ってはいないがこの一言で彼が誰のことを言っているのかは僕も翔子ちゃんもわかっていた。
彼女とは、高校の映研のヒロイン的存在、主演女優だった娘。
名は「赤坂美月」と言う。
赤坂は役者としてはものすごい才能を秘めていた。
当時の部長から天才と言われその実力は部員、顧問も認めていた。
容姿も大人びたうちに可愛い少女らしさを持っていて「スキャンダル」のヒロインにイメージ的にもぴったりな感じだった。
でも彼女は別の大学に行ってしまい、そのまま。
今何をしているのか僕には解らんない。
うわさによると同じ映研だった佐久間と付き合っていたみたいだが。
二人と別れ千鳥足で家路に向かう僕。
少しのみ過ぎたみたいだ、頭が痛い。
もしかして記憶が飛ぶ寸前なのかな?
繁華街の大通り、もう少しでごみ捨て場のごみ袋で
眠ってしまいそうになる。
いいか、別に眠っても。
そのままごみ袋に向かってダイブしようとする僕、その時誰かが僕の腕をつかんだ。
やわらかで小さな手。
女のこかな、とっさに僕を引き上げ様としたみたいだが僕が重かったのかその勢いで一緒に倒れこみそうになる女のこ。
僕はとっさに体制を変え、どうにか踏みとどまり女のこを受け止めた。
僕の胸元に顔をうずめる女のこ。
頭に野球帽をかぶっている髪の長い女のこ。
ストライプのシャツにタンクトップ、ボーイッシュな格好をしているが顔立ちはかなり可愛い。
あれ?
・・・・・・・・・・・・・どっかで見たような顔だな・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ!!
その女のこが誰だか思いだし、名前を言おうとする僕。
しかしそれよりも先に女のこが大きな声で僕に話し掛けた。
「ああ、きみ・・・僕だよ僕・・・・・・・覚えてる。」
女のこは僕の手を取りおおはしゃぎだ。
「僕だよ僕、美月、赤坂美月。」
そう、僕の目の前にいるのはあの赤坂美月だった。
僕らはお互いおおはしゃぎ。
「お久しぶり・・・・・・・元気だった・・・・。」
懐かしさとうれしさでそのまま赤坂をつれて居酒屋に足を運んだ。
あの後どんな時間を過ごしたか覚えていない。
飲み過ぎで記憶が飛んだみたいだ。
目が覚めると僕は自分のアパートのベットで寝たいた。
あの後赤坂と楽しくお酒を飲んでいたのは覚えている。
しまった、電話番号を聞いていれば良かった。
「スキャンダル」の話を持ちこめたのに。
・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ!?
今気づいたんだけど・・・・・・・・なんで僕服を着てないんだろう。
それに・・・・・・・・なんか横に暖かいものが触れているような・・・・・・・・。
げっ!!
僕はかかっていたシーツをめくった。
すると僕は驚く光景を目にする。
「あっ・・・・・・赤坂・・・・・!!」
それは僕の横で全裸で寝ている赤坂美月の姿だった。