S.S.トップへ戻る

 

「季節を抱きしめて」SS

 

 

「返答」   その後。

主人公

 

 

 

 

 

麻由と解れてから数ヶ月、季節は夏。

東京から故郷の北海道に帰ってきてはや二日目。

僕は麻美と二人で遊園地の大型プールに遊びにきている。

かなり大きな設備、東京の「サマーランド」を連想させる。

「センパーイ・・・・・・・・・・・泳ぎましょうよ。」

プールサイドで休んでいる僕の目の前で甘い声で呼びかける声、声のする方へ視線を向けるとワンピースの水着を着ている可愛らしい女のこの姿。

「おい、少し休ませてくれよ、麻美。」

そう言う僕の腕を「だめです」と言うように両手で引っ張る彼女。

元気だなーと思う、すごい体力だ。

プールについてからものすごいハイテンション、良く体が持つものだ。

「もう、ダウンなんですか先輩・・・・・・・。」

少しふくれた顔を次ぎ出す麻美。

その彼女を見て少しだがドキッとした。

今の彼女は泳いでいたので髪がぬれている。

そしてここ数ヶ月で少し成長したのか水着の胸元から見える小さいながらもふくよかな胸の谷間がのぞかせる。

照りつくような太陽に深い色をした青空、そしてぬれた髪と色っぽい水着姿。

今この最強の格好をした麻美に僕の心が興奮しないわけが無い。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ヤベ!!

僕はあせりながら下半身にバスタオルをかける。

その場は何とかごまかし「僕もすぐ行くから」と言って麻美をプールの中に向かわせた。

麻美がプールに入ったのをみて僕はバスタオルを持ち上げ自分の股間に目をやる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・悲しいな・・・・・・・男って。

 

 

 

夕方、ここは桜木公園のベンチ。

目の前には悲恋桜がある。

今まで長い間花を咲かす事のなかった悲恋桜、今年から春になると満開になるようになった。

そのためか今はこの木の周りにはいくつかベンチが置かれている。

悲恋桜がこの公園の桜の木の中で一番の老木であるのもベンチが置かれる理由みたいだ。

そのベンチで座りながら僕によりかかって麻美は寝ていた。

プールではしゃぎすぎたのだろう。

僕は彼女の髪を優しくなでる。

 

妹ぐらいにしか思わなかった麻美を今では別の意味で愛しいと思っている。

悲恋桜を見る。

今でさえ葉桜であるこの桜の木も本の数ヶ月前までは何もつけない丸裸の木だった。

桜の精、三年前死んだ麻由は今は桜の精としてこの悲恋桜に宿りこの桜の木は花を咲かすようになった。

 

その時に麻美の僕に対する気持ちを知った。

僕なんかをどうして好きになったのかは今でもわからない。

 

風が吹く。

夕日が沈み始め辺りは赤く染まっている。

風邪は涼しく心地よい。

誰もいない。

僕と麻美、二人だけの時間が過ぎている。

静かだ、麻美の吐息と風の服音、その風邪で鳴る桜の木の枝の音しか聞こえない。

麻由との思いでの建物、彼女とはじめてあった場所は今はもう無い。

あれから何回か屋上に上っていたがつい最近とり壊されその場所は今は平地になっている。

 

 

麻美の手を握り肩を抱きよせる。

しばらく麻美を抱き悲恋桜を見ていると握っていた麻美の手に力がこもった。

「先輩・・・・・・・・。」

麻美が目を覚ましたようだ。

そのまま僕の背中に手を回し抱きつく彼女。

そして悲恋桜に目をやる麻美。

「先輩・・・・・・・・・・・私、・・・・・・・謝らないといけないんです。」

謝る・・・・・・・・・・・・・麻美の言ったその言葉、何を誤るのだろう。

「先輩が姉さんに告白して・・・・・・・・・・・・・・・・・・姉さんが先輩に返事しなかったのは・・・・・私のせいなの・・・・・・・・・。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!

麻美の口から思いもしなかった言葉だ。

確かに僕も気にはしていた。

僕の事を麻由が好きだと知っていた。

なのになぜすぐに返事を聞かせてくれなかったのか。

「私・・・・・・・・・先輩と姉さんが両思いだって知ってたから・・・・・・姉さんに先輩を取られなくなかったから・・・・・・・

・・・・・姉さんに先輩を取らないでって・・・・・・・・・・泣きながら言ったことがあったの・・・・・・・・・・・・・・・・・それで姉さん先輩に返事しづらくなって・・・・・・・・・・・・・・・・ごめんなさい。」

少し涙目になる麻美。

僕はそんな彼女を両手で抱き寄せた。

「先輩・・・・・・・・・・・・。」

彼女を抱く手に力をこめる。

「もう良いよ・・・・・・・・・・・そんな昔の事は・・・・・・・。」

本当にもうそんな事はどうでも良かった。

僕はもう麻由に未練は無いし、麻美の事を一番に大事の思っている。

とはいえ僕がここ三年間麻由の返事が知りたくてしょうがなかった事も確かだったけど。

麻由と僕は好きあっていた。

今その麻由は桜の精霊として悲恋桜の中にいる。

そして今は僕と麻美が両思いでいる。

麻美にしてみれば麻由から僕を横取りしたような後ろめたさがあったのだろう。

 

でももう昔の事はどうでも良いことだ。

 

「今は・・・・・・・・麻美が一番大事だよ・・・・・・・・・・・・。」

「先輩・・・・・・・・。」

麻美はうれしそうな顔で涙目で微笑むと顔を近づけた。

 

 

 

 

チュッ

 

 

 

軽くキスをする麻美。

 

 

少し驚いた僕。

「あへへ、先輩と両思いになったんだもんこれからもいっぱいキスします。」

 

照れくさい僕。

ものすごくっ照れくさい。

 

 

 

そしてしばらく見詰め合う僕ら。

 

 

 

 

 

ベンチから立ちあがる。

「そろそろ帰ろうか・・・・・・・・・・。」

「はい、先輩。」

夕日が沈みかけ辺りが暗くなってきた。

 

「待って先輩」

麻美が僕の服の袖を引っ張る。

「さっき私から先輩にキスしたけど・・・・・先輩からキスしてもらった事ありませんね・・・・・・・・。」

 

 

「へっ?」

スットンキョンな返事をする僕。

そう言えば桜の精霊の麻由のときも麻美とのファーストキスの時も麻美がキスしてきたんだ、しかも不意打ち。

 

「カップルって普通男の人からキスしません?」

すごい事を言い出す麻美。

そうか?そう言うものなのか?

 

麻美は僕の前に達目をつむり頬を赤くして唇を突き出した。

「今度は先輩からお願いします。」

 

僕はたじろいだ。

柔らかそうな可愛い唇が僕の前に今か今かと僕の唇を求めている。

 

辺りを見渡す。

誰もいないな・・・・・。

僕は実を言えばものすごい奥手だ。

生唾を飲み込む。

麻美の両肩に手を置く。

ビクッと肩を振るわせる麻美。

緊張で強く閉じた唇を精一杯に力を抜き唇を少し空ける麻美。

2度も僕にキスをしておきながらいざしてもらおうとするとすごい緊張をする麻美。

たかがキスでものすごい緊張の仕方、そう言うぼくも体がギクシャクして動かない。

 

麻美の顔を見ていられない。

つい目がきょろきょろと辺りを見渡してしまう。

そして・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!

 

 

「なあ、麻美、ちょっと違うところに行かないか・・・・・・。」

僕がそう言うとさすがにむくれた顔をする麻美。

「何でですか?キスしたくないんですか?」

ちょっと圧倒される僕。

「いや・・・・・・・・なんか見られてる感じがして・・・・。」

僕がそう言うと辺りを見渡す麻美。

「誰もいないじゃないですか・・・・・。」

麻美がそう言うと思い、僕は麻美に指を横に差して見せた。

指差すほうへ目をやる彼女。

「悲恋桜がどうかしたんですか?・・・・・・・・・・・・・・・・・・あっ!!」

麻美も気づいたようだ。

「姉さん・・・・・・・・。」

 

うんうんと首を縦に振る僕。

 

二人で悲恋桜を見てる。

しばらくして互いの顔を見て僕と麻美は声をあげて笑った。

なんか悲恋桜を見て、僕らに背を向けて一生懸命みないでいようとする麻由の姿を考えてしまったからだ。

 

さっきまでの緊張が嘘のように消えている。

僕は笑っている麻美の背中に手をやりいきなり抱き寄せ彼女にキスをした。

少しびっくりしていたけどすぐに僕に身を任せる麻美。

それから僕らは少し長いキスをした。

 

 

 

 

 

 

 

夏、天気のわりに少し涼しい日の午後のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


S.S.トップへ戻る