定年後の読書ノートより
敗北を抱きしめてー第2次大戦後の日本人―ジョン・ダワー著、岩波書店
イントロ「日本の読者へ」に書かれた著者の本書執筆の歴史観または視点。
  • 歴史家は調べをすすめるうちに、過去をいっそうさかのぼってしまう。これは「歴史家の病気」と言われる。
  • 日米が激烈で残虐な戦争に陥りながら、いったん殺戮が終ると一転して友好国・同盟国となったこと、これはじつに注目に値する。
  • いわゆる権威や公式見解なるものには疑いの目を向けること。物事を相対的に見ること、あからさまな人種差別はもちろん、自民族中心主義に陥らないように注意すること、「平和」「民主主義」「平等」といった価値の実現は、常にその達成のために努力し、維持し、完成をめざしていく必要がある貴重な財産だ。
  • 私は日常生活のなかの力学やそれを形づくる構成要素を観察した。たとえば、映画、マンガ、歌、マスコミや宣伝文句、その他、普通の人の思いが観察出来るものを。なかでも私をひきつけていたのは、人間の複雑さであった。
  • 森首相の、「日本は天皇を中心とする神の国」というスピーチに非常に腹がたった。森首相のいう「日本」は、戦争中の宣伝屋たちが宣伝した「日本」である。
  • 私が努力したのは、敗戦のあとで日本人が直面した苦難や課題を伝えることであり、敗戦にたいして日本人がみせた多様で、エネルギッシュで、矛盾に満ちた、すばらしい反応を描くことであった。
  • 私達は「日本たち」というべきなのです。そのほうが日本の歴史の事実に近いし、今日の日本社会の実状にも近い。
  • 悲しみと苦しみのただ中にありながら、なんと多くの日本人が「平和」と「民主主義」の理想を真剣に考えていたことか!
  • 日本は、世界に数ある敗北のうちでも最も苦しい敗北を経験したが、それは同時に、自己変革のまたとないチャンスに恵まれたということでもあった。
  • 敗北は死と破壊を終らせてくれた。そして敗北は、より抑圧の少ない、より戦争の重圧から自由な環境で再出発するための、本当の可能性をもたらしてくれた。
  • 新しい世紀において、自分達の国は何目標とし、何を理想として抱きしめるべきか。今日の日本人がそう自問するとすれば、それはあの恐ろしい戦争のあとの、あのめったにないほどの流動的で、理想に燃えた平和の瞬間であり、それこぞもっとも重みのある歴史の瞬間として振返るべきものではないだろうか。

著者ジョン・ダワー氏:1938年生まれ、ハーバード大でDr取得。MIT教授、

著書:Yoshida Shigeru and the Japanese Experience 1878-1954: 1979

Race and power in the Pacific War 1986, Japan in War and Peace 1993

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