定年後の読書ノートより
カラマーゾフの兄弟、第10編、少年の群れ、ドストエフスキー著、河出書房
少年コーリャは今は亡き父の本棚から、幾つかの本を読みつくし、世界歴史のみならず、ラテン語にも、算術にも友人達に比較して充分に秀でていた。しかし彼は年下が故に仲間から馬鹿にされた劣等感を吹き飛ばす為、友達に出来ないことをしたかった。急行列車が通過する線路の間にはいつくばって負けじ度胸を示したのも、コーリャの激しい気性の現れだった。コーリャはある日捨て犬を拾ってきて、丹念に仕込んだ。それは病に倒れ、もう生きる望みも少ない2等大尉の息子、スムーロフに犬への夢をもう一度見せたいが為だった。

かってアリョーシャは川を挟んで石を投げ合う少年達を見かけ、1人できばる2等大尉の息子スムーロフに近づき、手を思いっきりかみつかれたことがあった。その後、アリョーシャは子供達の喧嘩を収め、敵対していた少年たちも憐れな少年スメーロフのお見舞いに日参するようにまで、仲直りをさせたが、少年スメーロフの身体は最早回復せず、もう医者すらもがサジを投げ出す病状になっていた。

わんぱく少年スメーロフには、かってパンの中にピンを混ぜ、野良犬ジェーチカに食わせひどい仕打ちをしたことを、今も心の重荷として死の床で苦しんでいた。

心優しいコーリャは捨て犬ペレズヴォンに一生懸命技を仕込んだのは、犬の事を今も悔やむ死の床の少年イリューシャを励ます為だった。

こうして仲間の少年達がいる前で、心配する家族やアリョーシャが見ている前で、少年コーリャは、実にうまく少年イリューシャを元気付け、捨て犬ペレズヴォンをかってわんぱく少年イリューシャがピンを飲ませた野良犬ジェーチカに扮して幾つかの芸を披露し、少年をすっかり元気にさせた。

こんなことは、大人には出来ないことだった。アリョーシャは少年コーリャの、慈悲深い対応にすっかり喜んだ。

しかし少年イリューシャの病はすでに深刻な状況に来ていた。もう聖書だけが、アリョーシャの救いであった。

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