定年後の読書ノートより
カラマーゾフの兄弟、第12編、エピローグ、ドストエフスキー著、河出書房
第12編、誤れる裁判

ドミトリー・カラマーゾフの公判は、イッポリート検事とモスクワから来たフェチェコービッチ弁護士間で激しく戦われた。裁判の前半の推移では誰もがミーチャの無罪はこれで確かなものになるだろうと予想した。突然の事態はイワン証言中の精神崩壊から始まった。スメルジャコフの自殺、3000ルーブルの提出、これらがすべて水泡に帰した。

カーチャが突然前証言をひるがえし、被告の殺人プログラムなるものを公開し、犯人はあの卑劣漢だと決め付けた。一人の女としての娼婦グルーシェンカへの憎悪と嫉妬の念の爆発だった。

フェチェコービッチ弁護士の最終弁論は極めて堂々たるもので、迫力に富むものだった。しかし、最後に父親殺しにおける、新しい倫理観念を説いた時、ロシア農民の保守的な風潮にあまりにも大きな衝撃を与えたのは事実だった。農民陪審員に大きな動揺を与えたのは事実だった。

1時間に及ぶ陪審員判決の結果は、「有罪」だった。ミーチャは叫んだ。「神とその恐るべき審判の日にかけて誓います。私は父の血に対しては罪はありません!カーチャ、おれはお前をゆるしてやる!兄弟よ、友よ、もうひとりの女をあわれんでやって下さい!」彼はしまいまで言い終らないうちに、法廷いっぱいにひびくような声を立てて慟哭しはじめた。それは彼の不断の声と違った思いもよらぬ新しい声で、どうして彼に突然こんな声が出たのか、不思議なほどであった。

エピローグ

イワンは瀕死の病状だった。カーチャは自宅にイワンを寝かせ、必死に看病した。アリョーシャはカーチャとイワンがミーチャ脱走計画を立案していたのを詳しく聞き、兄ミーチャもアメリカ脱出後再び自分はロシアに帰り、ロシアで死にたいと語った。アリョーシャはミーチャとカーチャを会わせ、お互いの心をもう一度確認させた。そこに突然グルーシェンカが偶然現れた。2人の女はここでも激しく相手をののしりあった。これは理性で解決できる問題ではなかった。少年イリューシャが死んだ。葬儀に集まった子供達の中にアリョーシャもあった。彼は子供達に語りかけた。「心を大切にして下さい。いつまでも思い出を忘れないように」。子供達の間から突然万歳の声が盛り上った。「ぼくたちあなたが好きです。ぼくたちあなたが好きです!」「カラマーゾフ万歳!」。少年達は歓喜に感動し万歳を叫んだ。

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