定年後の読書ノートより
ドストエフスキイーその生涯と作品、はにやゆたか著、NHKブックス
  • 20年ぐらいの周期でドストエフスキイ熱が再燃する。それはドストエフスキイが成長する作家であるからだ。今や時の流れとともに、ドストエフスキイは人類の文化史を飾る巨大な作家である。
  • 彼は世界文学古典に親しんだ。詳細は兄との手紙の中に残されている。ホメロス、ダンテ、シェークスピア、ゲーテ、バルザック、ヴィクトル・ユーゴ、パスカル、ジョルジュ・サンド、シルレル、ホフマン、プーシキン、バイロン等の名前が頻繁し出てくる。
  • 処女作「貧しき人々」でベリンスキーはドストエフスキーを「新しいゴーゴリが現れた」と高く評価した。「貧しき人々」は緊密な仕上がり、「二重人格」は誇りと卑下、優越感と劣等感の葛藤、「白夜」はロマンティックな味わい。
  • ロシアリアリズムの正道を踏み、「死の家の記録」において「緻密な観察者」として出発したドストエフスキーは、やがて、きびしい対立と格闘の中からやがて暗い懐疑を生み、人間性の深みに入りこみ、「徹底的な懐疑家」になっていき、さらに、「この現実を素材として考察するところの巨大な思索者」に成長していく。
  • 1821年次男として生まれる。1837年母死す。翌年ペテルブルグ陸軍工科学校入学。1845年「貧しき人々」1846年「二重人格」1848年「白夜」1849年ペトラシェフスキイ事件で銃殺刑の宣告、死刑直前特赦。シベリヤ流刑。1855年「死の家の記録」1865年「罪と罰」1867年「白痴」1879年「カラマーゾフの兄弟」1881年ペテルブルクにて逝く。
  • 「カラマーゾフの兄弟」で扱われているのは、多数者と少数者についての政治的自由の問題と自由の基本的な問題ともいうべき精神の自由の徹底的な検討。追及の仕方は徹底的だが、主題の出し方は極めて単純。ここにドストエフスキーの考察法の力強さがある
  • ありあまる物質的過飽和状態、この歓喜から忽然と目がさめて、人類は精神の自由や個性がなくなっていることに気づく。人間の顔が消え、奴隷の相好がこびりつく。人類は腐敗し始める。この時はじめて人類は無為の中に幸福はないと気づく。
  • 大審問官、自由は人類にとって重荷であり、苦悩をもった少数者のみが担う。大審問官というとスターリンを思い出しがちだが、D・H・ローレンスはレーニンを思い出した。つまりパン・奇跡・権威に相応するものとして、パンはパン、奇跡はレーニンが共産主義とはゾビエット権力プラス電力であるといったように、自然から取り出した奇跡でであり、そして権威は党であって、あらゆることの判定はそこへ集中するというイメージを組み立てた。パン・奇跡・権威を現代風に、パン・電化・党ということに置き換えた。

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