定年後の読書ノートより
この次はどんな本を読むべきか、西川尚武
ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」を読み始めたのは、1月27日であり、読み終えたのは2月11日だった。全巻を読み終るまでに16日間かかった。「カラマーゾフの兄弟」をどのくらいの時間をかけて読むべきか、森田草平は3ヶ月半もかかって感動しながら読んだといい、萩原朔太郎は2昼夜で読んだという。早く読むのも結構だが、果たしてどこまで感動を自分のものにしているのだろうか。読んで、考え、ノートする。このステップを経ないで、「あの本は読んだ」などと広言するのは恥かしい。

ドストエフスキーが集中的に読まれたのは、昭和十年前後。当時青年達は思想的転向を強いられ、精神の脱出口を求めて苦しんでいた。その次にドストエフスキーが読まれたのは敗戦直後、強制された旧秩序は崩壊し、青年達は再び動揺と混迷の中で、ニヒリズムに惹きつけられていった。実存的な思想形成とドストエフスキーとの間には強い相関関係がある。

この3週間、小説「カラマーゾフの兄弟」と併行して、下記の文学論を読んできた。どうしても、自分の疑問に応えてくれる幾つかの文学論が欲しかった。

ドストエフスキー人物事典、中村健之助著、朝日新聞社、1550円

知られざるドストエフスキー、中村健之助、岩波書店、2800円

ドストエフスキーのおもしろさ、中村健之助著、岩波ジュニア新書、600円

ドストエフスキー、埴谷 雄高著、NHKブックス、日本放送協会、700円

ドストエフスキイ、井桁貞義著、センチュリーブックス、清水書院、600円

謎解き「カラマーゾフの兄弟」、江川 卓著、新潮選書、新潮社、1050円

ドストエフスキー、江川 卓著、岩波新書、480円

ドストエフスキー伝、アンリ・トロワイヤ著、中央公論社、1800円

ドストエフスキーの天使たち、高橋康雄著、大和書房、2300円

「カラマーゾフ兄弟」創作ノート、河出書房新社、1800円

ドストエフスキー研究、唐木順三編、筑摩書房、3000円

ロシア文学裏ばなし、中公新書、中央公論社、640円

レーニンと文学、山村房次著、新日本選書、新日本出版社、1000円

この中の幾つかの読後感はすでに読書ノートに入力した。しかし、読書済の全ての文学論を入力するのは止めた。何故なら今自分が読んでいるのは小説「カラマーゾフの兄弟」であり、参考の為に併読した幾つかの文学論によって、自分の目で小説をそのまま読み取る努力を曇らせることになりはしないかと心配した。

今回ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」を読み終り、定年当時ホームページに宣言した65才までに、「戦争と平和」「カラマーゾフの兄弟」「万葉集」と「源氏物語」を読破しますという長期読書計画に対して、やっと半分まで到達したことになる。

しかし、自分には次の文学作品に入る前に読んで置きたい本が一杯ある。不破哲三「資本論研究シリーズ」・アルフレッド・アドラー「個人心理学シリーズ」・岩波書店「世界歴史講座」そして宮本百合子全集再読。

これらの日程をこなしていくとすれば、当初計画の「万葉集」や「源氏物語」に到達できるのはまだまだずっと先のようだ。勿論65才になるまで、すなわち我が人生、貴重なる現体力・現知力がかろうじて残されているこの時間内は、出来ればまず自分が読みたい書物をゆっくりと、しかし確実に読み重ねていきたい。しかしそれにしても、自分にとって、もう時間はそんなに残っていない。

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