定年後の読書ノートより
ロウソクの科学・再読、ファラデー著、岩波文庫
最近出席している名古屋哲学セミナー福田静夫先生は、ジョン・ダワー著「敗北を抱きしめて」の読後感を実に格調高く、内容豊かにまとめられ、毎回感心して聞いている。自分も福田先生の様にダイナミックに読みたい。そんな願いからもう一度、岩波文庫のこの名著を手に取った。

ロウソクが燃えるというひとつの現象を、1860年科学者ファラデーは幾つかの化学現象として実験的にこれを分析し、6回に分けて講義した。受講生は一般市民。ファラデー自身もかっては製本店員から独学で化学を学び、電気分解、塩素の液化等幾つかの歴史的大発見を成し遂げた著名な英国科学者。

ロウソクは個体であるのに、燃えれば何も残らない。ロウソクは溶けてその溶液は皿形を作る。皿の周囲が固いのは、空気の流れによる冷却だ。中央部は溶液池。この液が芯を毛細管現象で上っていく。そして熱により燃焼し、気体になって炎となる。炎の熱は空気と接した所が一番熱い。炎が光を発するのは炎の中に個体のままの炭素が光っているからだ。炎と空気との接触が進むと光らなくなる。炭素がなくなるからだ。その炎を冷却すれば水が凝固する。燃焼によって水が出来ている。ロウソクの炎の中には水素がある。水素と空気の酸素が化学変化を起して水が出来ている。そしてまた、ロウソクの炎の中には炭酸ガスも発生している。炭酸ガスは、炭素が酸素と化学変化を起しているからだ。空気とは酸素と窒素が容積比1対4の混合物である。炭酸ガス発生の検出方法をそのまま用いて、人間の体内でも燃焼が行われていることを立証できる。人間は酸素を吸って、炭酸ガスを吐き出している。吐き出したガスは炭酸ガスであることは、生石灰が白濁することによって確認できる。だからこそ、新鮮な空気の流通が良くない部屋の人間は酸素の変わりに炭酸ガスを吸っていることが理解できる。空気はきれいでなければならない。以上がこの本のストーリであるが、ここに出てきた全ての化学現象は講演者の壇上で行われる実験によって立証されていく。本には実験装置の挿し絵がある。

かって、岩波映画の犬渕氏と「岩波映画は何故ロウソクの科学を映画にしないのか」と訊ねたことがある。しかし、犬渕氏曰く、すでに日本の子供達はすっかり理科実験に興味を無くしているので、映画を創れという声も起こらない。教科書を通じて、理科公式のみを学ぶ生徒達には教科書・参考書による理科勉強のほうが、入学試験に効率的だと考えられているとのこと。

そうかも知れない。しかし、この名著を読むにしても、一度きりの素読では、読者は充分にこの名著の素晴らしさは理解できない。しかしきちんとノートを執って、2〜3回と読み直していけば、キチント理解出来るようになる。しかし、果たして何人の読者がそんな読書法をやっているのだろうか。

しかし、福田先生はいつもそれをやっておられる。だから同じ本を読んでもすごく深く読みこんでおられる。ここを自分は学ばねばならない。いかに読むべきか、迷うところだ。

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