定年後の読書ノートより

戦後史ノート(下)、恩地、川村、紀平、真継著、日本放送出版協会・放送ライブラリー5
  • これまでのような政治史とか経済史とかいう観点ではなくて、庶民生活史の観点でその中にある自分の歴史を振り返ることが出来、そのことが今自分がやっていること、考えていることにどうつながっているのか、そういうことを考えさせられる歴史、これが面白い。
  • 原作者である石原慎太郎氏と、シナリオライターである白坂氏と、そして監督恩地日出男、まったく同世代でありながら、一つの小説について3人3様の考え方をもって対立してしまう。一つの時代背景の中の若者であっても、必ずしも同じ中身ではないわけで、逆に言えば、違った風俗、違った時代背景の中の若者であっても、同じ中身をもっていることもある。太陽族とは、金持ちの若者が主体であり、僕もかなりしつっこく青春を描いているのですが、やはり金持ちの出てくる映画は撮っていません。
  • スターリンはどうして挫折するに決まっている武装蜂起を日本共産党に命じたのでしょうか。真の意図は軍事基地日本の破壊にあったのです。貧しい民衆は、革命が眼前にあってこそ蜂起します。そうすれば軍事基地の破壊や混乱という当面の日本の破壊という目的も実現します。スターリンはそれゆえに、日本に革命の機が熟しているなどとあらぬ幻想をふりまき、共産党に武装蜂起を指令したのです。
  • では私達は、あの時期何をするべきだったのでしょうか。いまさら取り返しがつくわけではありませんが、もしも私が共産主義者だったなら、暴力革命の勝利など説きません。軍事基地日本の内部撹乱の必要だけは説いたでしょう。党は真実の必要だけを説くべきだったのです。人間を利用しようとする政治運動は、必ずや人間から見放されます。現実の正しい認識にもとづく反戦運動のあり方だけを模索していきたい。
  • 近江絹糸の闘争の口火を切ったのは、大阪本社で働くエリート社員達でした。自社の労務管理のあまりの非人間性に憤慨した彼等が、すなわち、自覚した少数の前衛が口火をきったのです。そして労働者の不満と世論の支持が勝利に導いたのです。この闘争で3名の自殺者、9名の発狂者が出ましたが、発狂した彼女たちは、気の弱さ故に闘う仲間に参加出来なかったという女性たちが多かったようです。また当時の闘争手記の中で、闘う組合に参加するきっかけになったのは、会社側が準備した警官導入だったそうで、彼女の目には、警察が必死で抵抗する組合員を、強引に排除する弾圧行動を笑ってみている管理職の男たちを見て、この管理職達はこんな場面を見て笑えるほど冷酷な人間だったのか、自分の会社の従業員が髪をひきづられ、背中が露わになるほど両方から引張られ、ピケから排除されているのを笑って見ていられる程非人間的なのかと怒り、即座に闘う仲間に自分も参加する決意をしたと書いている。
  • 豊かな社会の最大の問題は、一般の人達がかえって生きがいを見出せなくなることである。と言えます。能力を発揮できるのはごく一部のエリートだけで、生きがいというものが、多くの人に判らなくなってきています。倦怠に満ち満ちた生活をしていて、せっかくの自由のつかい道が多くの市民には判らなくなっているのです。
  • 人間の歴史は欲望の歴史だと思います。欲望に終着点というものがない以上、お互いの約束ごとが必要になる。それは普遍的な意識のようなもの、正義とか倫理とかと呼んでさしつかえない性格のものでしょう。いちばん大切なのは教育ということになるようですが、それは時間がかかることなので、当面は、本音ばかり通さないで、たてまえも通す行ないが大事になってくるのではないでしょうか。しかし権力にとって望ましい教育法とは、体制に従順な批判力のない、アホウを大勢つくりだすほうが支配しやすいでしょう。

ここをクリックすれば、読書ノートの目録に戻れます。