定年後の読書ノートより
2002年の日本経済をどうみるか、友寄英隆他4名、雑誌「経済」2月号
シンポジウム:報告

同時多発テロ後のアメリカと世界経済、関西大学教授、森岡孝二、

  • 1990年代アメリカの繁栄を支えた条件とは何か;

経済のグローバル化のもとで、金融、情報、サービス分野における世界的優位性の確立

アパレルから情報機器にいたる生産基地の途上国化による徹底した価格革命の推進

中南米とアジアからの移民の大量受入とパート化・派遣化による低賃金労働力の確保

景気変動を先取りしたリストラーダウンサイジングの徹底による労働市場の流動化

株式の高い個人保有比率の証券市場の活況とリスク分散的な資金運用

将来所得の先取りと旺盛な個人消費と消費需要の持続的な拡大

アメリカに有利な国際通貨体制と経常収支の赤字をカバーする資本還流

日本経済の現況と構造的危機、中央大学教授、徳重 昌志、

  • 日本経済の深刻な構造的危機とは何か

持続的な失業率の増大…・完全失業者350万人、更に不良債権処理強行で+100万人

長期にわたる消費の低迷…・国民総生産の6割を締める個人消費がここ数年前年比マイナス

不良債権の処理…・2003年までは不良債権は17兆円。2009年で10兆円

産業空洞化…・産業空洞化がこのまま進めば2010年までに250万人失業者が追加

労働力構造の質的変化…・低賃金で解雇容易な非正規労働者の増大と正規労働者の急激減少

世界同時不況の現局面をとらえる視点、立教大学教授、小松善雄

* 世界同時不況の根底には何があるか。

グローバリゼーションの進行で、アメリカの景気が悪くなれば、日本の景気が悪くなる。

さらに、日本の多国籍企業化が進むと、景気の同期生が強まる

過剰生産恐慌と金融恐慌がともに起こり得る条件が生まれている

薪自由主義・薪保守主義では賃下げ、高失業率の我関せず。消費低下に歯止めがかけられず。

古典的な恐慌のパターンが復活する様相が出てきている。

IT産業世界同時過剰生産、世界的な競争が過剰生産を深め、同時不況局面に入っている

同時不況になると、景気回復の糸口、突破口をどう見出していくか、以前と比べ難くなった

今日の失業・雇用問題と「日本的経営」、日本大学教授、牧野 富夫

伝統的な日本の雇用と慣行の崩壊減少とは何か

日本的経営・運命共同体的経営の崩壊は、労働運動の再生、再構築の機会を産み出している

年度 1970年 1994年 1998年 2001年 2002年

失業率 (1.0%)(2.0%) (3.0%) (4.0%)(5.0%)

政府の失業者統計は、失業者を「嵌め込む」政策、これは雇用の流動化と多様化を生む

政府の530万人雇用創出の真意は、正規雇用を、非正規雇用に切り替えていく考え

経済のグローバル化と長期泥沼不況は失業者の増大と不安定雇用の増大を生む

小泉内閣の政治路線と国民の戦い、経済本誌編集部、友寄英隆

* 薪自由主義イデオロギーとは何か

単純な19世紀的な「個人主義」への回帰としてではなく、労働者の自己裁量権の拡大、市民の自己決定権の尊重などを前面にかかげながら、あたかも資本主義の新たな発展段階に対応した個人の自由の拡大を目指す進歩的・革新的なイデオロギーであるかのような幻想を伴ない小泉内閣の高支持率の秘密も、小泉首相の個性をおしだす独特の政治スタイルと関係している。従って、薪自由主義イデオロギーの政治的な結論や階級的本質を批判することにとどまらず、そのイデオロギーの客観的な根拠について、現代資本主義の経済的土台の変化と関連づけて注意深く理論的に解明し、その歴史的な意味を根底から批判する必要がある。

シンポジウム:討論

アメリカは基軸通貨国だから、世界からどんどん輸入しても輪転機を回してドルを印刷すれば輸入代金は幾らでも支払うことが出来る。日本は輸入すれば、輸入代金は輸出でドルを稼がねばならないし、産業の空洞化もさけて通れない。

アメリカと日本の金利数%の差が、日本資本のアメリカ流入を助けてきたが、アメリカの低金利政策がこれ以上進めば、日本の資本流入も危ぶまれてくる。今アメリカ株価ノ高水準維持も、日本の株価低迷に直ぐに準じてこよう。

ブッシュ共和党のアフガン軍事攻撃、地球環境問題、核廃絶問題、国際通貨政策で覇権主義的な強行路線が最近急激に強まっている。覇権主義的な強硬路線では、テロも根絶出来ないし、地球環境も解決出来ない、ドル暴落や世界恐慌も防げない。アメリカは戦争中心の路線を強行しようとしているが、長い目で見ると、その路線は破綻して、国際世論の流れを無視出来なくなる時が来るだろう。

弱肉強食、適者生存、リストラ正当視されるアメリカ資本主義モデルに対し、人間が安心して暮せるモデルを追求しているヨーロッパ資本主義モデルの動向は日本のマスコミでは殆ど取り上げられない。これは日米安全保証条約の縛られている政治的力によるものなのだろうか。

多年の高度成長至上主義とその帰結としてのバブルが生んだ日本経済の矛盾は、デフレを伴う大不況、景気循環的な恐慌として襲いかかってきた。しかし日本はバブル総括、金融不祥事総括は未だ何も出来ていない。アメリカでは1930年の恐慌の勉強をしようと思えば膨大なレポートがある。経済財務白書はあたかも株相場の予想屋のような、言葉の羅列に過ぎない。

日本産業の国際競争力が崩壊しつつある。産業空洞化にどう対応するか、産業空洞化で一番深刻なのは労働者・国民の雇用破壊。生活破壊。産業空洞化を容認していけば、安価な労働力利用の連鎖でしかない。EU協同市場成立に学んで、国民経済が成立する協調体制確立を学ばねばならない。

日本経済の改革の方向は、政府・経営者は市場競争の原理、新自由主義の原理を主張する。我々は生活の論理、人間の論理を軸にした日本改革を進めねばならない。

市場主義という原理に対し、我々が対置して行かねばならないのは、民主主義の原理だ。政治的な民主主義、経済的な民主主義、社会制度の民主主義、文化の上での民主主義というようなあらゆる角度の民主主義の論理を徹底的に追求していくべきである。

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