定年後の読書ノートより
対談「自主独立」をめぐって、現代日本文学体系54、宮本顕治、臼井吉見、筑摩書房
この対談は、現代日本文学体系第54巻巻末に載せられたもの。昭和41年11月(1966年)におこなわれ、可成りの長時間対談。今回前後3回ほど、読み直したが、何度読んでも読み応えのある貴重な対談。

まず評論家臼井吉見氏から宮本百合子葬儀における、分裂下共産党の百合子に対する悪言罵倒を取り上げ、共産党への不信を宮本顕治氏に突きつける。続いて平和革命から火炎ビン闘争への急展開の不可解さ、徳田球一共産党の独善的ゆがみの数々、百合子文学に対する極左文学者からの誹謗、志賀、神山に続く、中野、蔵原、佐多、野間等新日本文学会関係著名文学者の除名問題、全学連トロッキストと日本共産党の対立、フルシチョフの平和共存政策に対する日本共産党の批判等、戦後良心的知識人の精神内面に長く共産党への陰のわだかまりとして巣食ってきた諸問題を、ここで臼井氏は率直に取り上げ、鋭く宮本顕治氏にせまっている。

こんな時局的政治問題を、文学全集の巻末に載せていたとは今まで知らなかったし、逆にこうして文学全集に掲載されている限りは、巷の総合雑誌に掲載される対談と違って、40年後の今日も、その対談内容はきちんと文学を愛する読者の眼に鋭くとらえられるだけに、いい加減な対応では済まされない極めて困難なテーマであった。ところがこれがここでは実にキチンと40年後の今日も良心の思考基準にしっかりと応えているからすごい。

実は、1991年ソ連崩壊後、ソ連共産党秘密内部資料が全世界に公開され、ソ連は資本主義各国共産党に対し、いかに大国主義的干渉を行なってきたか、秘密文書の公開を通じて歴然となった。その結果資本主義の多くの共産党は存在土台そのものを揺るがすこととなり、今やその多くが共産党そのものの党名すら変えてしまった。その詳細はすでに不破哲三氏も幾つかの書籍で明らかにしているが、特に重大なのは、1948年の野坂指名なる平和革命論コミンフォルン批判が、宮本百合子文学に対する誹謗にも繋がっており、その後の志賀、鈴木、中野等の除名問題とも結びついていることを、40年後の今日になって我々は明確に知ることが出来る。

しかし宮本顕治氏は1966年のこの対談時点で、すでにこの大国干渉と自主独立問題こそが一番大切なこととして取り上げ、大国干渉を許さないためにも自分達共産党の力を強くせねばならないと主張している。

実にひとつひとつの問題を宮本顕治氏はきちんと考え、整理し、主張してきたのだということが、この対談を読んで良く理解できた。

この現代日本文学体系は、図書館から借りてきた本だが、いつか現物を古本屋で見つけ、自分の手元にもおいて、もっと徹底的にきちんと読み尽くしたいものだと思う。

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