定年後の読書ノートより

歴史の中のソ連社会主義、東大名誉教授 渓内 謙 、岩波書店 岩波ブックレット
1991年9月日本ジャーナリスト会議での講座を編集。著者曰く、緻密な論理構成で書き上げた論文ではない。Q&A形式で本書の要点を理解する。

Q;トロッキー「裏切られた革命」の結論として予測された崩壊が、目前のソ連邦の崩壊か

A;違う。ソ連だけでなく社会主義そのものの終末としてソ連知識人は理解しようとしている。

Q;ソ連邦崩壊の原因となったペレストロイカの民主化とは何だったのか。

A;共産党1党支配こそ社会主義という定式を崩したことが、民主化のきっかけとなった。

Q;ソ連崩壊ストーリは具体的にどのようなステップで進んだのか。

A;共産党の解散とソ連邦国家体制の解体がソ連社会主義の破産宣言に結びついた。

Q;現在社会主義支持の知識人が示す、世界的な共通姿勢とは何か。

A;@しばらく沈黙して事態静観 A弁明・防衛 B転向表明 3つの潮流の何れかだ。

Q;ソ連社会主義崩壊現象にみられる考え方とはどんな考えか。

A;スターリン主義に代わるものは、結局資本主義に求めざるを得ないという考え方

Q;ソ連の知識人達はこの価値体系の崩壊をどう論じているのか

A;雪崩のようなレーニン主義批判、レーニン否定 そして社会主義そのものの否定

Q;レーニン主義とスターリン主義の大きな違いは何か

A;ボルシェビキ思想=レーニン主義といい1928年以後の政治思想=スターリン主義

Q;今ソ連国民を支配している価値観の模索に伺われる問題点とは何か

A;社会主義絶望が資本主義の病理に目を閉じた イメージからだけでの理想化創りあげ。

Q;ブレジンスキー「大いなる失敗」大唱和にみられる危険性とはなにか

A;2流の歴史学者。論理の飛躍が危険。共産党の1930年以降の変質を見抜いていない。

Q;何故ソ連の政治指導者達はソ連の資本主義化に抵抗感もなく、むしろ熱心なのか

A;公有財産を私物化し、みずから資本主義の経営者・資本家になろうと企む連中ばかり

Q;資本主義化に際し、彼等政治指導者・国家官僚が今必要としている理念とは何か

A;自分達のイデオロギーを正当化すること。それだけに十月革命否定論に力が入る

Q:何故上からの十月革命否定論に対し、下からのソ連国民の怒りが起きてこないのか

A;革命後官製歴史教育の偽造と弾圧が、国民に歴史を正しく見つめる目を抹殺した

Q;国民は何故レーニン像までも倒壊したのか

A;スターリン主義の神話の解体が、マルクス主義そのものにも一緒に破壊的反応を示した

Q;ペレストロイカの失敗はどこにあったか

A;歴史的過去の罪状告発が中心となり、大切な歴史像の形成・実りの普及を怠った。

Q;ソ連歴史学に今求められるものは何か

A;スターリン主義の思考方法を根本的に再検討する「精神の革命」が必要である

Q;レーニンを今論ずる意味はどこにあるか

A;10月革命の理念が現代に持つ意味を探ることとその後の党の変質を明確にすること

Q;アメリカ側のソ連研究の主眼点はどこにあったか

A;レーニン主義はスターリン主義の全体主義を準備し、その原型を作ったという論理づけ。

Q;かってスターリン批判がソ連内部では如何に共産党の反省に生かされたのか

A;共産党の無謬性、正当性は依然不可侵として、共産党の体質改善に生かされなかった

Q;ソ連知識人の歴史観変遷から我々は何を学ぶべきか

A;現在から過去を見るとともに、過去から現在を見る過去と未来の対話こそ歴史の基本

Q;レーニン時代の政治的指導者層とスターリン時代の政治的指導者層の違いは

A;世代交替による質の低下が著しい。西欧の精神的風土に学ぶ開かれた体系が崩壊。

Q;スターリン時代は行政的一枚岩の組織と言われるが、その特徴は

A;知的質的低下。理論の人より行動の人、組織の人、ロシア一国に視野を狭く限定した

Q;スターリン時代の党の変質の実態は

A;党機構と国家暴力装置との癒着、社会的性格を喪失し、マルクス主義理念を喪失

Q;マルクスが社会主義革命は先進資本主義国でまず起きると予測した根拠は何か

A;2大階級対立で国民多数が労働者階級。高度の生産力が客観的背景を創りだす。

Q;何故、生産力、文明、人間的素材の欠如したロシアで社会主義革命が起きたのか

A;レーニンはブルジョア市民革命を志向した。主戦場は西欧でロシアは導火線のつもり。

Q;革命後レーニンはヨーロッパに継続しない革命を見て何を考えていたのか

A;1国のみで持ち堪えること。この袋小路を逆手にとったスターリンの1国社会主義論登場

Q;スターリンの1国社会主義論の理論的根拠とは何か。

A;スターリンは国民の民族感情を刺激し共鳴を得た。結局これが精神的支柱になった

Q;歴史的に見てスターリンの1国社会主義とは、トロッキーが指摘するごとく誤りだったか

A;その後のソ連経済の動向からトロッキーの批判は正しい。孤立した社会主義は無理

Q;農業集団化はソ連社会主義の凝縮。集団化を強制したのはスターリンの失敗か

A;革命当初は農民の自発性が重視された。しかし次第に目的は手段を正当化していった。

Q;ロシア革命において、民主主義の精神の通底から外れていた発展図式とは何か

A;社会主義が高度な社会を目指すなら民主的・人間的な方法が一貫している原則破壊

Q;集団化の問題点は何か。何故民主主義に反していたのか

A;統治のためには合意が基調。しかし1スターリンは「上からの革命」で強行し、失敗した

Q;ソ連史のみならず、社会主義史の価値体系をも崩壊させた「上からの革命」の問題点

A;目的と手段についての理念を否定する政治文化と政治体制をソ連に産み出したこと

Q;「上からの革命」でトロイカという非公式組織が農業集団化で教権を発揮したのか

A;強権的農業集団化強行。以後党官僚制と政治警察・暴力装置が癒着し、歴史的失敗

Q;レーニンの「開かれた体系」には西欧の精神的遺産を吸収する知的伝統があったか

A;有った。かってマルクス主義とは自由な理性的討論を基盤とした開かれた体系であった。

Q;スターリン主義のもとでマルクス主義が神学的教条となって失ったものは何か

A;マルクス主義の知的創造や歴史的創造力の源泉の意義を失った。恐るべき沈滞が来た

Q;スターリン主義の知的不毛からマルクス主義の終焉を結論する議論が流行しているが

A;亜流によって本流を評価する思想批判は、つまらない解説で思想を論ずる手抜き議論

Q;今知識人として大切なことは何か

A;開かれた体系当時の「原典」に立ち返ってみること。真の歴史批判の目を自ら養うこと

Q;ソ連の国家の理念として、歴史的誤りとは何か

A;「国家から社会へ」ではなく「国家の積極的役割」を主張したのは共産党の歴史的誤り

Q;スターリン主義は社会主義の虚像の上に築かれた体制だった。今の「改革派」の姿勢は

A;「改革派」は市場経済の虚像の上に築かれたイメージだけの体制を構築しようとしている。

Q;ソ連崩壊から教えられるものは何か。

A;既成の価値体系は解決に役立たない。だからこそ過去の遺産を発掘し、対話をすること

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