定年後の読書ノートより
同時テロ事件とブッシュ政権の世界戦略、上田耕一郎著、雑誌経済75号
副題;そのユニラテラリズムと対アジア・対日対策、ユニラテラリズム=単独行動主義、独善的な国益追求、例えば、テロ犯と、それを支持する国に差がないとして、米国を支持しなければ、テロリスト支援国家とみなすとも受け取られかねない姿勢で諸外国に賛同を求める姿。これはソ連崩壊後、アメリカが唯一の超大国になり、アメリカの軍事力、経済力の一極覇権主義が、危険な新段階に進行したことを意味している。これは世界世論獲得の必要がなくなったこと、すなわちアメリカが横暴をほしいままにする戦争と抑圧の国際秩序か、国連憲章にもとずく平和の国際秩序かの国際対決で、アメリカ抜きでは、いかなる国際問題も決定できない背景がある。国際秩序の決定力はアメリカにあるという奢りが、ブッシュ政権の国益優先ユニラテラリズムの突出である。

レーガン政権のSDI構想とは、実はソ連との核軍拡競争の峻烈化によるソ連の弱体化、さらにはその崩壊の意図をもふくんだ戦略だった。91年のソ連崩壊という歴史的勝利の経験は、アメリカ帝国主義にとって、忘れがたい勝利の体験となっている。そのアメリカ帝国主義にとって、アジア地域でももっとも警戒する対象は中国である。クリントン時代に、戦略的パートナーとされた中国は、ブッシュ政権になって戦略的競争相手と変った。アメリカでは、ソ連が崩壊したのは、レーガンの戦略防衛構想をめぐる軍拡競争のためだと信じられているソ連が崩壊した以上、ヨーロッパでは大規模戦争は起きず、アジアでは核戦争の危険すらあるということになれば、今年のQDR=国防政策見直しは当然中国の台頭に伴って、今後は米国の軍事作戦の主要舞台は欧州から太平洋に移る。

国際社会の脅威となったテロの根絶をめぐって、国連中心の国際的強力による法の裁きか、それともアメリカ中心の報復戦争かという選択が、国際政治の中心課題となった。戦争は国連憲章によってすでに違法化されている。その国連憲章を無視し、法による裁きを拒否したブッシュ政権の報復戦争は、市民の多数の死傷者を出している。この危険な武力行使は、事態の悪循環を拡大する。

この事件のブッシュ政権対応をめぐって、アメリカの一極覇権主義の世界戦略は、にわか国際協調主義の大規模外交活動を展開している。しかし、米国の軍事攻撃によって、テロ根絶で一致していた国際世論は、重大な亀裂と矛盾が広がり、テロ勢力に破壊活動の条件を与える結果となっている。報復とテロの悪循環を引き起こすならば、アメリカ帝国主義の新国際秩序つくりの野望も、国際世論から孤立して、みじめな破綻となるであろう。

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