定年後の読書ノート
世界史のなかのニホン軍―戦争と軍隊を知らない世代にー江口幹著、三一書房
著者江口氏は職業軍人の家庭に育ち、陸軍幼年学校在学中に終戦となり、その後アナキストとして幾つかの著作発表。氏の独自な戦争観、軍隊観には始めて接したが面白い。

西洋化と言われるニホンの近代化には大きな失敗があった。ニホンは西洋から民主主義を学ばなかった。日本が切り捨てた民主主義が、ニホンの命取りになった。日本人には主権意識はない。特に軍隊はそうだ。精神主義が物質的威力に勝てると上から下まで信じていた。

ニホンの資本主義は、英米市場を足場として拡大してきた。日本が軍事的にも経済的にも強大になればなるほど、日本は米英に依存していかざるを得ない構造にあった。しかし、その米英への依存から抜け出そうというニホンの長期戦略に、最初からきちんとした戦略があったわけではない。

日本人は、物事を大局的に考えることが出来ない。世界的に、長期的な展望をもって考えることが出来ない。日本人が考えるのは与えられた枠内の中で、どう対処するかであって、社会や世界の創造的な構想力は全然ない。自分達の世界以外に目を向けようとしない。他の世界のことを知らない。

第1次世界大戦後、戦争が思想戦化してきたことをニホンは全然重視して来なかった。連合国側はすでに露骨な帝国主義に対する反省があり、植民地民衆と連帯する批判勢力も形成され、民族自決を重視したのに対し、ニホンの軍首脳には、この国際的な大局観は全然なかった。日本がアジア解放の盟主なる言葉を使った意味は、あくまでアジアの新しい支配者を意識したまでのことで、日本軍には植民地解放勢力との連携などは全然配慮が無かった。アメリカの戦力を十分に把握することもなく、ただ気負って、ゆけゆけという作戦だけを強行し、この延長線上に特攻作戦があった。軍部内で冷静な判断をする者は、戦闘意欲に欠けるとして罷免された。

ニホンには長期的な戦略がなかった。アメリカと戦争するに際しても、アメリカを全然研究してはいなかった。いわんや世界がどう動いているか、ニホンは確かな見通しは全然持っていなかった。日本が本格的に近代戦に遭遇したのはノモンハン戦であたが、軍はこの敗北すらも充分に解析することもなく、責任を曖昧なままに、近代戦の現実から学ぼうとしなかった。

日本軍では大きな視野からの作戦は下手で、単なる局所的な戦いでの英雄戦を重視した。陸大教育の中にも、大戦略という教育はなかった。あったのは戦術教育だけだった。物事を根本的に、世界的に、長期的に、展望をもって考えることは日本軍には全く欠けていた。この日本軍の致命傷は、ニホンでの民主主義の未成熟に原因がある。

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