定年後の読書ノート
ソクラテスとプラトン、田中美知太郎著、中央公論社
田中美知太郎先生の長文に及ぶプラトン哲学論の中で、特に「パイドン」を論じた箇所が面白い。「パイドン」はソクラテスの最期を扱っている対話編ですでに小生も読書ノートに取り上げている。ソクラテスは、死において、自己の魂が解放されると考えている。ソクラテスの対話は、このことをめぐって展開されていく。

我々の生命のもとは、魂であり、それは「イデア」の絶対的存在として感覚的把握をこえた永遠不死の性質を持つと考えられ、また、我々がイデアの存在を認めなければならなくなる必然性は、魂が我々の生まれる以前にも存在したことの必然性と結びつけて主張されている。

イデアとは、プラトン哲学の中心概念で、理性によってのみ認識される実在。感覚的世界の個物の本質・原型。また価値判断の基準となる、永遠不変の価値。近世以降、観念また理念の意となる。実在とは、観念、想像、幻覚など主観的なものに対し、客観的に存在するもの、またはその在り方。

プラトンは感覚的世界を実在の影に過ぎず、その背後のイデアを真の実在と考えた。これに対しアリストテレスは感覚的世界を真の実在とし、形相(イデア)を感覚的世界に内在する不変の構成原理とした。またバークリは一切の観念に還元する観念実在論の立場をとり、ヘーゲルは実在を精神の自己客観化として実在と観念の統一を主張した。(以上、広辞苑より抜書き)

魂の不死を説く「イデア論」。ソクラテスは、生命のもとである魂にとって、生命の正反対の死を受け容れることが本質的に不可能であるということから、魂の不死、生命の永遠を論証しようとした。ほかに還元されない絶対的な在り方の主張。ものの美が美であるまえに、美が美である。我々の生命が生命であるのも、生命が生命だからである。そうであるから死を受け容れない。

ソクラテスは、魂の不死を論証するために「イデア論」を持ち出し、ものが生じ、滅び、存在するということが、人間の生死に関連して問題となり、窮余の一策として、ソクラテスはこのイデア論的説明が導入されたと田中美知太郎先生は整理する。

田中先生曰く。私たちの思考は、既知から未知への冒険を含み、いろいろな困難や行き詰まりに当面して、これを打開し、そこから脱出するための新しい工夫をする、その積極性と創造性に本来の働きが見られると。

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