定年後の読書ノート
現場主義の知的生産法、関 満博 著、 ちくま新書
雑誌「経済」書評欄にて拝見、これは是非読みたいと判断、あちこちの本屋を探しやっと見つけ出した。この本は、我々のようにいろいろな国を歩き、いろいろな工場を訪問するコンサルタント稼業の人間には、必読ののハウツーものでもある。

氏の意図されておられる「現場主義」とは、先ず自分で実感すること、自分の言葉で表現すること。「現場」に愛情を感ずること、一元のお客さんでは終らないこと等を深く肝に銘じ、気持ちを引き締めることから出発する。

いわゆる情報社会の波にのって、要領よく情報機器を使いこなし、まとまった報告書を手際良く書き上げていく人達の流れとは、一定の距離を置いきたいと関先生は主張される。

なぜ「現場」なのか。「それは、現場には新たな発見があるからだ」と氏は考える。「現場」には最先端がある。これが関先生のモットーだ。

いわゆる、要領よく「情報」だけに頼る視点には「緊張感」がなく、そんな観察者はあくまで「観客」にすぎない。自分の身の安全を確保し、ゆったりと傍観している「よそ者」に過ぎないと関先生の言葉は厳しい。

「現場」では対話が必要である。相手にとって有益なことを先ずこちらから提供すべきである。「現場」と付き合うには、覚悟が必要である。物事には流れがあり、無理をしてはいけないが、しかしチャンスを逃してはいけない。スケジュールは現地で作るのがよい。持参する荷物は出来る限り少ない方が良い。機内持ちこみ荷物の範囲内にすべきである。その為には生活態度を引き締めよ。ノート、筆記用具、カメラ、フィルムは武器である。A4ノートは重過ぎる。要するにポケットに入る大きさで、いつでも、どこでも書けるノートが良い。筆記用具は水性ポールペンが良い。カメラはこれからデジカメの時代だろう。現地で病気にならない為には、とにかく現地の水を飲まないことだ。

「現場」に入る前に、たとえ文科系事務職であろうとも、工業高校の教科書ぐらいはきちんとマスターしておけ。工業高校の機械、電気、設計、工場管理の教科書はマスターしておくのが当然だ。「現場」をまず見よ。現場で写真を取るときは十分に気をつかうこと。しかし、例え写真を撮るにしても、遠慮していては何も出来ない。貪欲にやるべきときは、貪欲であれ。「現場」資料の整理は大変だ、資料整理に精力を使い果たすな。整理をきちんとするより、整理すべき仕事を早く片づけること。

関先生の「現場主義」出発点はミクロ経済学・産業組織論にあるが、若き時代学んだエンゲルスの唯物史観的歴史観が今日の宝になっていると先生は述懐される。

現場報告書では、出来る限り概念はモデル図式化して説明せよ。現場報告の視点は平均値を掴まえるのではなく、平均値より進んだものと、遅れたものを先ず掴め。それには現場で聞き出すことだ。とにかく「現場」に入れ。資料報告は「書ける時間に一気に書く」「書けるところから先ず書け」。ラブレターのように、自分の気持ちを相手に判ってもらうように、思いを込めてただひたすらに書け。これが一ツ橋大学関教授のノウハウだ。

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