定年後の読書ノート
戦後責任論、高橋哲哉著、講談社
高橋哲哉:1956年生まれ、東大教養学部哲学、「記憶のエチカ」岩波、「逆光のロゴス」未来社、「デリダー脱構築」講談社、「ナショナルヒストリーを越えて」東大出版、「ショアーの衝撃」未来社、「歴史/修正主義」岩波

1998年日本戦没学生記念会8.15集会講演記録、「戦後責任」再考。

高橋哲哉の戦後責任論は、「応答可能性としての責任」から戦後を考えている。他者の呼び掛けの応答することは、プラスイメージであり、人間関係を新たに作り出す行為である。

日本の戦後責任は、植民地支配責任を含む戦争責任から出ており、国際法違反や戦争犯罪、迫害行為の責任であり、戦後責任の中心には日本の戦争犯罪者の処罰や償いが不充分であった問題が横たわっている。東京裁判は冷戦状況が始る中で

行われた日米合作の政治裁判であり、戦後生まれの日本人は、直接の罪責はない。応答可能性としての責任がある。「日本人」とは日本国家という法的に定義された「政治的」共同体に属する一員という意味での日本人である。

応答可能性としての責任は国境を知らない。日本人として戦後責任を果たすとは、侵略戦争や植民地支配を可能としたこの社会の在り方を根本から克服し、日本を「日本とは別のもの」に変革していくことに外ならない。日本政府が教科書検定を通じて、日本の戦争責任をウヤムヤにしようとする忘却の政治。政治的責任から解放されることは、政治的権利の喪失と表裏一体である。

日本の戦後責任をきちんと果たすように、日本国家の在り方を変えていく責任、日本政府に戦後責任を果たさせることを通じて、旧帝国の負の遺産を引きずった既成の日本国家を批判的に変革していく責任が戦後責任である。

ここをクリックすると目録に戻ります