定年後の読書ノート
第3巻、幻の楼蘭・黒水城、井上靖・岡崎敬・MHK取材班、日本放送協会
シルクロード」に関する本は今までに随分と読んできた。しかし、このNHKシルクロード12冊シリーズほど迫力があり、ストーリもよくまとめられ、理解しやすい本は始めてだ。

前半は楼蘭、言うまでもなく、ヘディンのさまよえる湖ロブ・ノール湖のお話が実に面白い。ロシア探検家ブルジェバルスキーは最初「ロブ・ノールは昔からあったわけではない。カラ・ブランとカラ・コシュンの2湖こそ、ロブ・ノールである」と発表した。ドイツの大御所リヒトホーヘンは反論、「タリム河の東端にあるのはロブ・ノールは塩水湖でなければならない。」リヒトホーヘンの弟子、スエーデンのヘディンは、その後ロブ・ノールに4つの湖を発見、これこそロブ・ノールだと主張。一方ブルジェバルスキーの弟子、探検家ロズコフは、「クルック・ダルヤ河は東からカラ・シェンコに流入する」と反論。ヘディンは、タリム河は乾く。ロブ・ノールも乾く。河道が変る。タリム河は土砂をロブ・ノールの湖底に運ぶ。ロブ・ノールは1600年を周期として、南北へ移動する」と主張、ロブ・ノールをさまよえる湖と名づけた。今回NHK取材班はロブ・ノールを求めてヘリコプターで探索確認、ロブ・ノールにはすでに水はない。ロブ・ノールは涸れてしまったと確認。本件に対し、保柳博士は、崑崙・天山山脈の雪解水量と過去2千年の海面高さの変動から、基本的にタリム河の水量減少が、ロブ・ノールを涸れさせたのだと説明される。

楼蘭も、紀元前120年に歴史舞台に登場、紀元前70年に舞台から消えた。その間たった50年。何故消えたか。ロブ・ノールの水が、楼蘭周辺から消えたから人は楼蘭に住めなくなって消えたのである。ここには自然と人間の必死な葛藤がある

黒水城も同じこと。酒泉から北方に、かってチベット系西夏王国があった。カラホトはその首都だったらしい。西夏王国はジンギスカンに滅ぼされた。しかし、かってマルコポーロも東方見聞録に書いた、エチナ=カラホトは今は完全に砂の中に消えた。

そこには、不安定な居延沢伏流水の挙動より、かってのエチナ河は、カラホトの近くに豊かに水を供給していたのだと判ってくる。目下カラホトの地は確実に乾燥が進み、黒水城は砂に埋もれていくと知る。

シルクロードは地球の恐るべき自然の力をひしひしと実感させてくれる恐ろしい実験舞台でもある。

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