定年後の読書ノート
デモクラシーの帝国―アメリカ・戦争・現代世界―藤原帰一著、岩波新書
新しい世界秩序が姿を現してきた。それは、アメリカが「帝国」として世界を動かすというものだ。衰え、荒れきってしまった国連、帝国に向かうアメリカの下で世界はどうなるのか?。

著者藤原帰一氏は1956年生まれ。東京大学法学政治学研究科教授、若い頃親の勤務でNYに長く住んだこともあり、原書引用文献は驚くほど豊富。

国際政治を考える時は、冷戦終結からスタートすべきである。冷戦終結は、国際政治と国際経済の両面でアメリカを圧倒的に優位にした。当初冷戦終結は、国際協調の貴重な機会であった。しかし、新しい国際秩序の確立は果たされなかった。

アメリカには建国以来、多民族国家という歴史背景から普遍主義が基調にある。冷戦終結は、アメリカの理念原則を対外的に表現する機会を与えた。軍事的に覇権を保持しつつ、人権や民主主義を外交実務で表明するのは、アメリカの外交特徴である。アメリカがアメリカを救うことと、アメリカが世界を救うことが、全く同じ意味で語られる。

アメリカが第1次世界大戦にてルシタニア号撃沈によって、第2次世界大戦では真珠湾攻撃によって決定的な役割となった如く、2001年9月11日以降の対テロ戦争としての現実は、アメリカ人の生命を守る為の戦争が、圧倒的な国民の支持のもと、手段を選ぶことなく続けられる。

アメリカは、国際協調や、多国間強調に代り、単独行動と対外的優位の確保にアメリカ外交が踏切った。軍事紛争、つまり脅しと破壊にかけて、多国籍の兵力を編成しなくとも米軍だけで事たりる。ブッシュは安全保証における国際協力や同盟国の協調の必要性を殆ど考えていない。単独行動で先手をとるのがブッシュの手法だ。孤立を辞さない単独行動主義への外交政策に転換した。

アメリカが単独行動に走り、あるいは政策の一元化を求めれば求めるほど、国連を始めとする国際機構は空洞化し、国際関係という領域が分解してしまう。アメリカの帝国化のもたらす最後の、そして最大の問題がここにある。

帝国となるアメリカにとって、その最大の敵はアメリカ自身である。帝国から国際主義に戻ることは、世界各国にも、またアメリカにとっても、有利な選択となるはずである。帝国に向ってしまったアメリカを国際主義と国際協力のなかに引き戻す為の我々の努力は、アメリカをまず正しく把握することから始めなければならない。

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