定年後の読書ノートより
国民経済学批判大綱、エンゲルス著、新潮社
目下、有斐閣ブックス「資本論物語」精読に努めています。兎に角十分に自分が理解しない限り決して前には進まないという原則を守っているので、88項目を読み終るにはこれから1年はかかるだろうと思います。しかし、同時に、マルクス・エンゲルスの古典も順に読みこんでいきたいと考えています。

1844年当時、エンゲルスは、マルクスより一歩先を歩いていた。エンゲルスは新思想をすべて書物のみから得ていたのではなく、商売、軍隊、紡績工場経営者、チャーチスト運動家との接触等、幾つかの体験の過程で、新思想を自分のものとし、自らの哲学を、理論と実践を整合させながら築きつつあった。1844年パリで発行された「独仏年誌」に、エンゲルスは、「イギリスにおける労働者階級の状態」と本稿「国民経済学批判大綱」の2稿を発表した。この2つの論文は後にマルクスに大きな影響を及ぼした。「資本論」はこの「国民経済学批判大綱」の発展した形であるとも断言することも出来る。

エンゲルスはスミスやリカードの国民経済学(古典派経済学)は、公認された詐欺の完成された体系であり、偽善・矛盾、不道徳の学問であるとも言い切ります。国民経済学は私有財産の理論であり、私的所有の諸法則を展開した。

購買と販売は、利得の直接の源泉となる。

リカードは、物の抽象価値は生産費によって決定されると主張する。価格は生産費と競争との交互作用によって規制される。これが私的所有の法則である。商品の生産費は、土地と資本と労働から成立つ。

資本は蓄積された労働であるから、資本と労働は同一物である。土地、資本、労働が富の条件であって、それ以上のなにも必要としない。私有財産こそ、土地と資本と労働とを分離し対立させ、人間を孤立化させるとともに、自由な人間的活動である労働を痛めつけるのです。競争は独占へ移行する。競争と過剰生産に基く動揺は、恐慌と繁栄、過剰生産と不況の交代がおこる。経済学者はこの狂った状態を説明することは出来なかった。

それを説明する為に、マルサスは人口理論を発明した。エンゲルスは、マルサスの人口理論を、恥ずべき卑劣な学説、自然と人間に対するこのいとうべき冒涜と断じます。

エンゲルスは、資本主義における競争の現実を深刻に取り上げます。しかし、これ以後、資本主義の未来は、プロレタリアートの源泉力によって拓かれるという、労働の疎外、疎外の止揚と理論は発展していくわけです。本稿はこの問題のスタート地点を明確にした意義が大きいのです。

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