定年後の読書ノートより
ベストセラーの戦後史、井上ひさし著、文芸春秋社
ジョン・ダワー著「敗北を抱きしめて」を読んだ時も実感したが、我々は時代の渦中にいる時、周囲の全ての背後には大きな歴史的ストーリが流れていることに気づけないが、やがて渦中を抜け出し、遠くから全体像が見渡せるようになってくると、そこには歴史を動かしていた大きな力がはっきり見えてくる。

歴史を動かしている大きな力とは、国民を働かせ、物を生み出させるもととのなる時の権力のもすごい力と、時の権力の重圧に抗し、抵抗の叫び続ける国民の声、この2つの大きな力の対決こそが、歴史を動かして背後の力だと、気がついてみると、歴史の動きがはっきり見えてくる。

井上ふさし著;ベストセラーの戦後史も矢張り歴史ストーリの中でベストセラーがどう生み出されてくるかの歴史物語である。戦後史の流れの中で、ベストセラーのテーマを読んでいくとベストセラーそのものの流れもまた面白くなってくる。

昭和20年「日米会話手帳」。戦争に負けた。アメリカ人と少しでも会話を交わせば、生き残れる道が見つけ出せるかも知れない。よし、英語に挑戦してみよう。

昭和21年「完全なる結婚」。男と女。おお、なんて素晴らしい生き物だ、生きていることは素晴らしい。性をのぞく。どきどきする。アメリカ人は、性もオープンにしている。

昭和22年「旋風20年」。俺達を苦しめた戦争は、財閥と軍部が我々国民を無視して突入した陰謀だった。その裏では何があったのだ。俺達にも真実が知りたい。

昭和23年「愛情はふる星のごとく」。ゾルゲ事件の尾崎秀実氏は、実はすごい人だった。日本の未来を信じ、我々の為に死んでいった英雄だった。

昭和24年「この子を残して」:日本に原子力爆弾が落されたのは、天にまします神の思し召し。人間はトコトン誠実に生きて行かねばならない。

昭和25年「宮本武蔵」:佐々木岸流との決闘に宮本武蔵は旅にでる。今は修行だ。すべてが学びだ。

昭和26年「ものの見方について」:イギリス人は考えてから走る。フランス人は走ってから考える。日本人は走る前に考えられないか。日本は何故無茶な戦争を始めたのか。

昭和27年「三等重役」:サラリーマンに徹して生きていけば、この先には自分にも、下っ端重役くらいは回ってくるかも知れない。少しは光が見えてきたぞ。

昭和28年「光ほのかに」:アウシュビッッツの残虐な地獄の中にも、素晴らしい生きる勇気のストーリがあった。この世の中、絶望するのはまだ早い。

昭和29年「女性に関する12章」:戦後ますます女性が強くなっていく。最近では女性が判らなくなってきた。この本は、この悩みを教えてくれる。

昭和30年「広辞苑」:じっと日本語を見つめ、解明してきた人達がいた。その仕事がとうとう完成した。一度自分もその大事業をのぞいてみよう。

こうしてベストセラーは続いていく。

昭和31年「太陽の季節」:もう真面目な貧乏学生は主流派ではない。ブルジョア青年の傲慢さがチラチラと見えがくれしはじめてきた。

昭和32年「挽歌」;北海道の大地に不倫という文字を静かに、文学的に取り組んだ一人の女性作家が突然現れた。

昭和33年「経営学入門」:会社は最近急速に伸びてきた。日本中に活気が出てきた。経営に新風が求められている。

昭和34年「論文の書き方」;左翼は次第に沈静化している。清水にも、反体制側から体制側に誘う力が見えてきた。清水は最初に飛びついた。

昭和35年「性生活の智恵」;結局は本能、誰もが改めてそう考え始めた。

昭和36年「英語に強くなる本」:エリートは海外出張、とすれば自分も。

昭和37年「易入門」:生活が変化する。余りの速さに時々信じれなくなってくる。

昭和38年「危ない会社」;体質の古い会社は駄目だ、次につぶれるのは何処か。

昭和39年「愛と死をみつめて」:幸福とは誠実に生きる美しさにあると信じたい、

昭和40年「おれについてこい」:鍛えれば勝てる、大切なのは精神力かもしれない。

昭和41年「人間革命」;松本清澄さえ共産党と創価学会は共存出来ると考えた。

昭和42年「マクルーハンの世界」、昭和43年「どくとるマンボウ青春記」、昭和44年「都市の論理」、昭和45年「心」、昭和46年「日本人とユダヤ人」、昭和47年「日本列島改造論」、昭和48年「日本沈没」、昭和49年「ノストラダムスの大予言」、昭和50年「欽ドン」、昭和51年四畳半襖の下張裁判・全記録」、昭和52年「間違いだらけのクルマ選び」

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