定年後の読書ノート
復活 第1編、 トルストイ原作、北御門二郎訳、東海大学出版会
昭和13年徴兵拒否により東京帝国大学を中退、熊本の山中にたてこもりトルストイの作品翻訳に全生涯をかける、孤高の哲学者北御門二郎氏の名訳。北御門氏の名訳はすでに民話「人は何で生きるか」で、実にトルストイの考えているところを的確に把握し、明確に訳しだされる一途さに感動し、「復活」も北御門氏の訳で読みたくなって、まず第1編を読了した

主人公、ドミートリイ・イワーノウィチ・ニェフリュードフは大地主の息子。高い精神性に憧れる青年公爵。19才の夏を叔母の家にて過ごす。そこには半ば女中、半ば養女として、黒い瞳の少女カチューシャが働いていた。2人が始めて唇を合わせたのは、ライラックの茂みの中。しかし、2人はそれ以上の関係は何も無かった。

それから3年、ニェフリュードフは、金持ちの青年がたどる世のお決まりのコースとも言うべき、安逸で享楽的な世界に遊んだ。彼はやがて自分を信じることをやめ、エゴイズムの世界に安住した

軍隊生活での或る日、叔母の家に立ち寄った。そこには年頃を迎えたカチュウーシャがいた。軍隊で養われた獣性は、可憐な小娘カチューシャとの一夜の快楽もほんの出来心からだった。出発に際して、カチューシャに百ルーブリ紙幣を握らせ、ニェフリュードフは2度とカチューシャの前には現れなかった。しかし不幸にも彼女は妊娠し、主家を追われた。彼女は身を崩し妓楼を転々とする身となった。ある町で、殺人事件に巻き込まれ、女囚として獄につながれた。その裁判の陪審員に立ったのが、今や公爵として市の有力者である独身公爵ニェフリュードフだった。

裁判ではニェフリュードフ等の小さな手違いからカチューシャに懲役の刑が下りてしまった。ニェフリュードフは自己の内面生活の汚れに気づかされ、精神的目覚めに起ち上がった。カチューシャの再審に向けて猛然と動き始めた。カチューシャにとっては、驚きであり、ある時はむしろわずらわしくさえなってきた。

しかしニェフリュードフは真剣に彼女との結婚をさえ意識し、シベリア流刑とでもなれば、自分もシベリアへ行こうとさえ決意する。カチューシャ再審活動の中で、ニェフリュードフは監獄につながれている多くの冤罪者や、弱き人々、貧しき人々を知っていく。そして政治犯といわれる人達の真剣な生き方にも、まぶしささえ感じ始めていく。そんな中、少しづつ、カチューシャもニェフリュードフの誠意にうたれ、自分もしっかりせねばと自覚しはじめてくる。

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