定年後の読書ノート
トルストイの復活、第3編、北御門二郎訳、東海大学出版会
マースロワ等囚人達の大部隊はモスクワからシベリアまで、数ヶ月の移送道中にあった。ニェフリュードフは当初に決意した通り、護送部隊の後に密着随行し、マースロワをはじめ、輸送中に起きる囚人達に対する目にあまる虐待を見守り少しでもマスーロワを安全にと、彼女を人間的に倫理感の高潔な政治犯の仲間に入れて貰うよう頼みこんだりした。政治犯の中には素晴らしい男女達がいた。かって貴族令嬢でありながら、貧しき人々な仲間に入って、徹底的に革命運動に徹していこうとするマーリヤ・パイロウナや、密かにマースロワに思いを寄せる 赤色革命家シモンソン、大学を首席で卒業しながら、真の公共とは革命にありと決意して革命運動に参加してきたクルィリツォーフ、ニェフリュードフは、革命政治犯こそ高い精神的、道徳的高潔の人々が情熱を持って参加していると知っていく。

ニェフリュードフは護送将校達の侮辱的態度に不快さを実感しながらも、一生懸命に囚人達とのパイプを維持せんが為に将校達の傲慢な態度にも目をつむる。それにしても、護送中の囚人達の生活は余りにもひどいものだった。

ニェフリュードフは、マスーロワとの結婚こそは自分の果たすべき当然の責任と考えていたが、マスーロワは、そんなヌエリュードフの態度に気が重かった。そんな純真な彼女の真の姿を見て、革命家シモンソンはマスーロワに思いを寄せていく。「彼女を休息して上げたいのです」。そんなシモンソンの気持ちをはっきり打ち明けられたニェフリュードフは、マスーロワの気持ちこそが、最終判断を決めると彼女に迫る。その時、彼女の流刑は、ニェフリュードフの友人カレーニンのはたらきにより、無罪放免が決定されていた。そして彼女の本心は、「自分は革命家シモンソンに従ってシベリアに行きます」とはっきりと最後の気持ちを述べた。

マスーロワは言った。「あなたさまには、これまでに、ほんとうにいろいろ尽くして下さいましたわ。」「では、御免下さいまし」。彼女は彼の手を握りしめ、急いで身を翻して出ていった。ヌエフリュードフは思う。「おれは生きたい。家庭が、子どもが欲しい。人間らしく暮したい」。カチューシャからの別れの辛さからではなく、人生そのものにひどく疲れたような感じだった。

罪なき人々を抹殺していく監獄の実体にニェフリュードフはなんとかせねばという、切実感を感じていた。偶然イギリス人と同じ問題で接する機会もあり、彼は偶然に聖書を手にした。そこには、神こそ全てお見通しであり、神の声に、神の教えに従えとあった。ニェフリュードフはあらためて神の声に今こそ耳を傾けることが出来る自分があると実感した。

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