定年後の読書ノート

現代アフリカ入門・再読、勝俣 誠著、岩波新書
9月度の哲学セミナーで、現代アフリカ問題が取り上げられた。自分は講師である吉田千秋先生に次の如き質問をした。

第2次世界大戦直後、次々と植民地国家は独立を果たした。どの国も申し合わせたように社会主義を国是とし、貧困に苦しむ大衆は、社会主義こそが貧しい独立国を豊かにしてくれると信じて疑わなかった。当時は資本主義最後の段階である帝国主義の超大国アメリカとソ連を先頭とする人民主権の旗を掲げる社会主義諸国、そしてその中間にあって、AA非同盟諸国であるインド、中国、インドネシア、アフリカ新興諸国等々があった。自分自身は、インドネシア・バンドンにてAA非同盟諸国会議開催会場を訪問し、どれほど新しき時代の、新しき主人公達に感動の未来を夢見たか、あの夢は矢張りすべて夢に過ぎなかったのか。

そして40年後の今日、ソ連そしてあこがれの非同盟諸国からは我々ははっきりと裏切られ、社会主義とは名ばかりで、その内実は目をおおうばかりの独裁政治・暴力支配の国家機構の正体を見せ付けられ、愕然とする今日この頃である。この事実を吉田先生はどう把握しておられるのか、と激しく詰め寄った。吉田先生は次のように答えられた。

かってAA諸国は、社会主義を掲げて新興国家をスタートさせた。そこには、無から出発する国の必然としての中央集権的国家構造=擬似社会主義国家という国家体制の必然があった。その後、もし順調な新興国家起ち上がりが可能であったならば、社会主義を国家指針とした当時の指導者に間違いは無かったろう。しかし現実は先進諸国の複雑な利害関係が新興諸国に絡み、その後の進展は図式的には進まなかった。

国家とはどんな場合でもそうだが、いくつもの矛盾が絡んでいる。利害構造が新興諸国の貧富の格差を容易に生んでいくのは、新興諸国の矛盾と先進諸国の矛盾の絡みに起因する。無から出発した新興諸国の当初国家資金の貧窮より、その救済を先進諸国に仰がねばならず、その結果先進諸国からの資金提供は、国内外の政治権力の腐敗をまねいていった。その中心的存在である国家指導者は、国内の弾圧体制を強め、独裁者としての側面を強めた。その実態は想像を絶する暴力機構の登場となった。

新興諸国の内政矛盾は部族間の内戦というパターンにつながり、一方先進諸国の利害関係は武器輸出というお決まりの結果にはしり、結局内戦を繰返す現在の国家構造になっていった。今アフリカは内戦から抜け出せない。何故ならあまりにも武器がむちゃくちゃに多すぎるから。エイズ特効薬すら購入できない社会実情にありながらどうすることも出来ない。こうした背景は、オイルショック以降の、世界大不況をアフリカモノカルチャ経済に集中させた先進国の功罪を明るみに出さねばならない。

そして今、アメリカ中心のグローバル化の中で、アフリカの価値観と先進諸国の価値観の格差は激しく対立し、債務返済ゼロ運動に先進諸国側は頭を抱え、アフリカを中心とする荒廃国家は今や開き直っている。現地産業は育たない。貧しさの蓄積だけが進む。世界中の差別問題と環境問題が今アフリカに手中している。この遠因には我々先進諸国が大きく関わっていることを日本人のどれだけの人々が認識しているだろうか。

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