定年後の読書ノート
トルストイ民話集、北御門二郎訳、塩の道書房
トルストイ訳者北御門氏の改題より、各民話の解説キーワード

人は何で生きるか

私(北御門氏)が最初に出合ったのが、この民話だった。旧制高校1年、17歳の時だった。「人は何で生きるか」は、私に人生を、人生における第1義の問題を真剣に考えるきっかけを与えてくれた。人生は畢竟不幸や悲哀をまぬがれるものではない。だからますます我々は神を求めねばならない。では神とは何か。人種を越え、国境を越え、人々の心の中に住む愛のことではないか。愛の中にこそ、生きる意味のすべてがある。

火の不始末は大火のもと

鶏の卵1つのことから始った口論が発端となって、ついに村の大半が鳥有に帰する大火が発生したというこの物語。敵意は敵意によって決して消えやしない。敵意を抱かないこと、そのことのみによって相手の敵意は消える。

愛ある所に神有り

文芸の形を借りたキリスト教解説書。イエスにとっては、神を愛すること、隣人を愛すること己の如くすることは、完全に同義語である。

2老人

断絶も飽満もない真の人間的幸福は何か。己を殺す人々のために祈り死んでいったイエスの精神に学べ

イワンの馬鹿

「人は何で生きるか」に続いて読んだ「イワンの馬鹿」が決定的に私(北御門氏)をキリスト教に結びつけたのは、旧制5高の1年生だった。この民話に出合った衝撃は、到底筆舌に尽くし得ない。トルストイの入門書として、「イワンの馬鹿」を推薦する。

人に沢山の土地がいるか

パホームが血を吐いて倒れている姿を見た記憶があるので、この作品が日本人に読まれた歴史は随分古いと思う。限りなき物欲に駆使され、自ら身を滅ぼす哀れな人間の姿。土地が手に入れば入るほど、ますます土地への欲望が烈しくなる男の話。

トルストイの民話は、人類にとって、偉大な教科書だ。

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