定年後の読書ノートより
数学はこんなに面白い、岡部恒治著、日本経済新聞
定年後知的好奇心に基く、自由な読書選択範囲はどんどんと拡大する。英語とドイツ語だった大学語学は、ラジオ講座と夏期集中合宿講座のお陰で、卒業後はフランス語と中国語、ハングル、ロシア語を追加出来た。歴史は毎月哲学セミナーで学ぶ網野先生の「日本とは何か」で、次々と新しい歴史観に接することが出来るし、またシルクロード体験に基づいて、遊牧民歴史文化に関しては益々読書範囲は広がっている。唯物論哲学は、毎月具体的に現代問題を取り上げて、皆でディスカッションを重ね、今や哲学史を中心に読みたい本は一杯ある。そして現代政治学に関しては、闘う反体制運動に強い関心を持ち、こうしてつぎつぎ読んでいけば、学習範囲は面白いように広がっていく。しかし、ふと思う。自分は工学部を専攻した技術者でありながら、卒業後、数学をきちんと学びかえしたことがあっただろうかと。

確かに、自分は学生時代から数学は好きな科目のひとつだった。息子が大学受験勉強していたころは、息子の数学を覗いて、「どれどれお父さんが解いてやろう」などといって、息子の前でイイカッコをしたものだ。しかし、息子が東大時代に仕上げた修士論文を読むと、残念ながら自分にはさっぱり判らない、「これはもう、自分の出る幕ではない」と完全に数学そのものに決別し、以後数学の本など開いたことなど一切ない。文字通り、数学はすっかり縁遠くなってしまっている。

この度、自分と息子の間で決定的な数学格差を作っているのは何だろうと反省してみると、主要な原因は自分の行列式学習は極めて不充分だったと自覚して、この際行列式を学ぶべく、上記の1冊と、岩波書店の「行列と1次変換」を学び直し、苦手な行列式を整理し直した。

大切なのは、先ず行列式にのみ使う特殊な専門用語を理解せねばいけないと思った。

行列( a b c d )を(x y)に、作用させるとは、ベクトル(xy)を(ax+cy bx+dy )

に移すことをさすと本に書いてある。作用とか、移すとか、さすという言葉の意味をきちんと定義つけて理解しているかどうか、これらが理解の要になっている。

また行列の掛け算では、P*Aは必ずしもA*Pとはならないという重要な定義とか、また単位行列は1を意味し、O行列は数字のゼロに対応することも、数字の感覚とは随分違う。

何故逆行列というものをを求めるのか、この意味もしっかりと理解しておくこと。

すなわち、未知数が2個の場合は、行列式なんか解かないで、連立方程式で解くほうが勿論早いが、未知数がだんだん多くなって、さらにその解がつねに正になるかなどの条件を検討する場合は、行列で扱った方がはるかに便利である。当然ながらこのことを、あらためて今回学び直した次第。

この本の前書きにも書いてあるが、数学こそ、意味をつかんで類推したり、何が本質なのかを見極めて抽象することを学ぶには最も良い学問である。実はこの何が本質なのかを見極める目を養いたいというのが、現在の最大の願いでもある。

大学教授という看板の影に隠れて、散々に反共活動をやりたい放題にやり続ける北海道出身の幾人かのチンピラ教授達の抽象術に負けられない、負けてなるものか。そんな気持ちも手伝ってこの際、徹底的に数学を学び直してやろうと意気込んでいる。

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