定年後の読書ノート
世界の高齢者福祉、山川和則著、岩波新書1991年刊
著者は京大工業化学卒、松下政経塾で高齢者福祉を専攻。29才。

高齢者とは65才以上の老人をいう、日本の高齢化比率は1991年には11%。2020年には25%が予想されている。高齢者問題の深刻さを表す数字として高齢者の自殺件数、年間6100人に達する。高齢者は皆他人に言えない苦しみを抱えている。老人の自殺の動機は、7〜8割が、家庭問題の中にある。家族と同居している高齢者は、独居老人よりも、自殺件数が多い

家族を老人ホームに入れるのは、姨捨山に捨てるようで、お家の恥という意識がある。家族を老人ホームに入れるのは世間体が悪い。しかし、1986年の統計では、60万人の寝たきり老人の内、25%が老人ホームに、50%が長期入院(6ヶ月以上)、その内、14万人は、特別許可老人病院と呼ばれる老人向け病院に入院している。残り25%が在宅寝たきり老人である。

老人病院は文字通り人生の終着駅。中流以上の家庭の家族は一般に冷たい。病院にお年寄りを入院させると、逃げるように病院を立ち去り、死亡の知らせがあるまで、ほとんど面会には来ない。

お年寄りの介護は家族内の問題、介護に他人の手を借りるのは家の恥という日本の国では、高齢者福祉は長い間未発達であった。その結果寝たきり大国になっている。お年寄りのお世話をする家族を支援しようという、福祉制度を充実させなければならない。

核家族化は進み、働く女性は増え、子どもの数は減っている。これからの老人介護はどうすれば良いか。家族を中心としながらも、社会全体でお年寄りを世話をするシステムに変えていく必要がある。施設や病院、ホームヘルパーや訪問看護婦が、家族を支えることが、一層大切になってくる。

介護は育児と違って、24時間体制の重労働。かつ寝たきり老人の介護者の平均年齢は9割が女性、50才代後半、これでは体力的な問題から寝かせっきりのお世話にならざるを得ない。寝かせっきりにするか、しないかは、男性が介護に参加するか否かにかかっている。老人介護は、男女両方の責任という意識改革が求められる。

福祉という言葉には、救済的なお恵み、お情けという暗いイメージがつきまとう。スエーデンやデンマークでは福祉の意味は、生活の質を保障するという人権的な意味がある。権利として保障される社会サービスという意識が強い。

お年寄りに優しい気持ちをだけでは、高齢化問題は解決出来ない。その敬老の心を形にしていく福祉が必要だ

死ぬ前には、人間誰もが身体的にハンディを負う。その時に受ける介護サービスをお恵みと考えるのではなく、当然の権利として受けて行きたいものだ。日本の場合、お年寄りの身体の具合が悪くなると、休んで頂戴とすぐ寝かせようとする。本人も家族も、これが一番の優しさだと信じている。甘え文化と呼ばれる所以だ。老後は子どもに面倒を見てもらおうという優しい日本文化に対して、老後は自立して生きて行かねばという厳しいイギリス文化、寝かせっきり老人が増えていく日本の老人介護の在り方に優しい日本必ずしも老人の幸せに結びついているとは言い難い。

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