定年後の読書ノート
胃がんと大腸がん、榊原 宣 著、岩波新書
衝撃的な話から始る。1775年、イギリスは産業革命の真っ只中にあった。イギリスの工業地帯は煙突が林立し、多くの少年たちが煙突掃除人として働いていた。多量のススが股の部分にたまったが、そのススを洗い落すことも、少年達はあまりしなかった。少年たちが青年期に達すると、殆どの煙突掃除人は陰嚢(いんのう)にがんが発生し、なすすべもなく死んでいった。陰嚢がんの原因はススであること、約10年の潜伏期のあること、そして、早期に手術するほか治療法がないこと、を正確に観察したパーシバル・ポットの外科報告を読んで、1915年山際勝三郎と市川厚一は、兎の耳に化学物質であるタールを塗って、がんを発生させる実験に世界で始めて成功した。その時に山際氏が詠んだ歌。

出来つ 意気昂然と 2歩3歩

胃がん、大腸ガンを発生させる発ガン物質。フリーラジカル(体内で造られる活性酸素)

ダイオキシン類(焼却炉の中で有機物と塩素が反応してつくられる)ベンツピレン(たばこ内)ニトロソ化合物、環境ホルモン。発ガン物質を含む食品は、魚の焼けこげ、食品添加物。食塩、脂肪、コーヒ、ワラビとフキノトウ、飲酒、喫煙。

悪性腫瘍とは、遺伝子に変異をきたした単一の細胞が特定の集団に増殖し、宿主を死にいたらしめるもの。

がんの末期は、痛みは「最後の痛み」と怖れられている。がまんできないぐらいの烈しい痛みである。この時は痛みを和らげるために麻薬を使わざるを得ない。そして、がん毒素によるがん悪液質のために不幸な結果となる。

がん予防12ヶ条。偏食しないで、バランスのとれた栄養をとる。同じ食品を繰り返し食べない。食べ過ぎを避ける。脂肪の取り過ぎを避ける。深酒はしない。喫煙は少なくする。適量のビタミンA,C,Eと繊維質のものを多くとる。塩辛いものを多量に食べない。あまり熱いものはとらない。ひどく焦げたものは食べない。かびの生えたものは食べない。過度に日光にあたらない。過労をさける。身体を清潔に保つ。

がんの告知は患者にも家族にも残酷きわまる。告知する上でもっとも大切なのは、誰の為の告知かである。がんと判ったとき、一番強く患者の気持ちを捕らえるのは本人のことよりも、家族のことである。人生の最後を生き甲斐のあるものにするよう、人生の最後を人間として生き抜き、共に喜び、共に笑い、そして、共に悲しみに打ち勝つことが出来るように手伝う為の告知であるべきだ。少なくとも、この世に共に生を得たことを喜び、先立っていくことを悲しみ、残された時間、限られた時間をもっとも有意義に過ごすことが出来るようにする告知であるべきだ。

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