定年後の読書ノートより
東海道五十三次を歩く、@ A B C講談社ソフィアブック
歴史街道をゆっくりと味わい、歴史のロマンに触れるのは楽しい。2年ほど前、東海道五十三次を自転車で走破してみようと思い立ち、折り畳み自転車を購入、休日を利用して、熱田七里の宮を出発し、東京に向かって一生懸命に走ったことがある。折り畳み自転車のメリットを生かし、目的地の近くまではJRで出かけ、駅で自転車を組み立てて、一路旧東海道を走った。勿論事前に5万分の一の地図で、旧東海道がどういう道を走っていたか入念に調査し、途中訪問すべき博物館や旅篭跡など観光スポットを事前チェックし、スケッチポイントも調べあげた。

昼食は土地の郷土料理を味わい、地酒を楽しみ、土地の昔話を好んで聞いた。印象的な風景は自転車を止めてスケッチし、道中記とスケッチはパソコンに収め、可成のところまで進んだ。旅はこうすれば楽しい。自分でも旅のコツがつかめたように思った。この旅シリーズが終ったなら、次は九州を自転車で一周する計画も夢見てみた。旧道歴史文献も可成集めた。しかし、東海道五十三次走破計画は、名古屋から掛川までで突然中断、その後再開していない。中断理由はあの大井川鉄橋を自転車で走った時、ぴったりと横にくっついてゴウゴウと走るダンプの恐ろしさと、歩道すら設けない道路行政の自動車優先志向にとうとう堪忍袋の緒が切れた。橋の上は随分横風が強い。そして歩道もない橋の欄干をふらつきながら自転車を漕いでいると、もう即座に危険を直観する。恐ろしかった。偶然今朝の朝刊で、チャリンコ旅の一人の老人が、後ろから走って来たダンプに引っかけられて命を落としたと小さなニュースが載っていた。旧東海道も大きな川の近くでは容赦なく走る危険なダンプ街道になっている。川を横切ることは容易ではない。今回講談社発行の歴史街道ガイドシリーズには、挿し絵画家として申し分ない柳柊二氏のカラーイラスト入りで、氏自身が旧東海道をこまめに歩いて集めた写真も豊富で、この種のガイドブックとしてはひときわ内容豊かな出来である。

柳柊二氏のスケッチはパンチが鋭くて印象強い。自分も道中こんな絵が描きたかった。

世は自動車万能時代だ。しかしけつの穴から毒ガスを吹き散らしながら、周囲の迷惑も顧みず自由奔放に走りまくるあの自動車には良い印象は持てない。自分はいつの日か健康な太陽の下、折り畳み自転車尺取虫方式でゆっくり東海道五十三次を全走破したいし、その内には九州の名所旧跡も折り畳み自転車を利用しながら回ってみたい。四国巡礼も面白かろう。

司馬遼太郎の名作「街道をゆく」全43巻のシリーズを、折り畳み自転車を友に、スケッチしながら回ってみたらどんなに楽しいだろうか、いま、柳柊二氏のスケッチを眺めながら夢はどんどん膨らんでいく。

歴史街道ガイドシリーズは眠っていたかっての夢を再び目覚めさせてしまったようだ。

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