定年後の読書ノートより
ダッカの55日、大嶽洋子、秀夫夫妻共著、中央公論新社
京大大嶽教授のもとへ、或る日ダッカ大学ラーマン教授が訪れ、是非ダッカ大学で2ヶ月間、日本の政治史に関して講義をして欲しいとの依頼あり。教授この年になったら奥さん同行は必須。歌人である大嶽夫人叫ぶ。「バングラデシュには蛇はいないの!」。「蛇のいる国なら絶対にいやよ!」。なんだ、かんだと騙されるようにして、マラリヤとテング熱が横行するバングラデェッシュに出発。

ターミナルビルにむっとたちこめる異様な匂い。渋滞と猛烈な排気ガスの雑踏から突然群がってくる「バクシーン」の無数の目。車の中にも矢張りひそむ吸血の蚊。外国資本の高級ホテルの横は、この世の地獄とおぼしきスラム街。

ディプロマティック・エリア・グルシャンのゲストハウス。多くの使用人に囲まれて優雅なマダム生活に安住することなく、大嶽夫人の好奇心は膨らむ。しかし、一歩ゲストハウスから外に出るとそこには、危険が一杯。外に出るのは止めたほうが良い。3方ガラスばりのリビングルームで花に囲まれ昼寝。容赦なくドアを開けて出入りする掃除人夫達。

かって米ソ冷戦でパキスタンはソ連側につき、インドは米側について対した。米中直接外交に怒った佐藤首相はいち早くバングラデェシュ独立を承認、世界最貧国バングラデェシュは大の親日派。以後バングラの最大援助国は日本。

自分は目下JICAからバングラデェシュ紡績工場の技術指導可否の打診を受けている。それ故にバングラデェシュの歴史と現状を注意深く学習中。しかしこの国にはもうひとつの苦しみがある。地球温暖化で深刻な洪水と海岸浸食で狭い国土は確実に沈みつつあり、1500万人が土地を失いつつある。もう堤防で防御する段階は放棄された。世界で一番沈みつつある恐ろしい国でもある。衛生状態、経済状態の悪化のみならず、治安状態も残念ながら確実に深刻化している。ロマンティックな海外生活を夢描くイメージからはほど遠いバングラデェシュ。

2ヶ月のダッカ生活を終えた大嶽夫妻、現地JICA事務所にも出発挨拶。「日本の中高年はここバングラデェシュの経済復興にもっと力を貸すべきですね」と大嶽夫人。

オイオイ僕のことを言ってるのじゃありませんか。僕はまだ迷っているのです。どうしようかって。

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