定年後の読書ノートより
きみたちと現代、宮田光雄著、岩波ジュニア新書
昨日、マンション10階から娘の不登校、家庭内暴力を悩んだ母親が飛び降り自殺した。ご主人は1流会社のエリートサラリーマン。明るく活発な奥サンだった。駆け込み寺は無かったのか。しかし駆け込み寺で問題の本質は解決出来ない。大切なのは子供達が健やかに育ってくれる環境をどうやってつくるかだ。そんな問題意識を持って読書離れしている現代高校生を対象にしたこの本を少年の心になって読んでみた。

著者、宮田光雄氏は書いている。{今の若い人達は、自分達にとって直接的な、感性的な体験の枠内で与えられる幸福感に満足している。「いろいろ問題もあるけれど、結局平和なのよね」といって、現状に満足している}。氏は「夜と霧」アウシュビッツ収容所での限界状況や、シュバイツアー博士と黒人人種偏見を取り上げ、如何に生きるべきかを奥深い所から若者に問い掛けている。

良い本だ、しかし何故現代の高校生達はこうした本に興味を示さなくなったのだろうか。こうした素晴らしい本をもっと若い人達に読んで欲しい。

自分達の少年時代、時代は今よりずっと貧しかった。しかし戦後民主教育に燃えた青年教師達は、私達に「勇気を持って生きよ」と教えてくれた。戦後民主教育の土壌から進歩的な学生達が次々と生まれて来るのを恐れた時の政治家達は、教師達を目の敵にして民主教育そのものに襲い掛かってきた。時の政府は教師達の情熱を巧妙に押えこみ、企業に迎合した管理教育なるものを押し進めてきた。要領良く生きることを是認する企業社会と、企業社会に迎合した管理教育。その結果が今日の学級崩壊につながっている。戦後教育の情熱を破壊したのは日教組ではなく、企業社会に迎合した管理教育ではなかったか。

自殺した奥サンの背景には、体制権力が、青年教師達の情熱を押えたこんだ歴史が隠されている。このことをもっと我々は糾弾していく必要があるのではないか。

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