定年後の読書ノート

八路軍の日本兵たちー延安日本労農学校の記録―香川孝志・前田光繁著、サイマル出版
日中戦争下八路軍の日本兵捕虜は延安日本労農学校を組織し反戦活動を続けた。これは戦争下を如何に生きたか人間良心の素晴らしい実記録である。

著者によれば延安にて組織された反戦兵士は1937年から1944年までに2407名に及ぶ

昭和20年6月の日本当局司法省文書では、「在外共産主義分子として最も警戒を要するものは、「在華日本人民解放連盟」である。延安に入った日共野坂などが中心となり、即時停戦、軍閥打倒、民主主義政治体制の確立等を綱領とし、我が国の革命情勢の成熟をねらっている」と報告している。

自分はこの本を読んで、一番興味を持ったのは、如何に旧日本帝国軍人が反戦戦士に脱皮していくか、その過程の秘密である。

多くの日本軍スパイも捕虜を偽って延安にもぐり込み、敵地攻略を試みたが総て失敗している。それは、送り込まれたスパイそのものが、自分は日本軍から派遣されたスパイであることを自白し、反戦戦士として明らかに皇軍に寝返っていったからである。

何故こうした人間変革が出来るのか。これをアメリカは洗脳という。しかし当事者の記録を読むと、先ず自分で考えさせられること、本を読ませ、講義を聞かせ、そうした過程で自分の生い立ちと受けてきた教育が間違っていたものと自覚し、一方八路軍の風紀と秩序、理念と厳格な自己制御の理性に感動し、過去の自分を否定する勇気を呼び覚ます、このパターンを単に洗脳と決め付けて良いだろうか。

最近ある小学校では読書習慣を生徒に習得させたら不登校も学級崩壊も無くなったと聞く。人間は本を読み、真面目に考えさせれば、理性を呼び覚ますことが出来る。

ただ、理性を呼び覚ました人間は、必ずしも企業でも、政治でも、体制側からの命令を安易に受けない人間になること事実であり、これを恐れる施政者が必ずいるということも事実である。

考える人間は、反戦兵士に変身する、この事実をこの本を読んで実感した。

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