定年後の読書ノートより
「理念と実際の格差」、フレッド・エルスナー著、国民文庫
ソ連崩壊要因のひとつに、民族問題がある。東欧諸国やアフガニスタンへの軍事的侵略は、ソ連社会主義の正体として人々の記憶に長く残る。かって、教科書的存在であったフレッド・エルスナー著の「現代マルクス主義とその批判者」から、民族問題の理念をもう一度列挙し、「理念と実際の格差」を見直してみたい

「民族とは、言語、地域、経済生活及び文化の共通性のうちにあらわれる心理的状態の共通性を基礎として生じたところの、歴史的に形成された、人間の強固な共同体である」

「民族は歴史的現象であり、そのはじめ、発展、終わりを持っている。」

「民族は上昇しつつある資本主義とともに形成されるため、ブルジョアジーが主役を演ずる。彼らは、彼らの階級的利害にもとづいて、民族運動をあふる。」

「民族の統一というスローガンは、資本主義の条件のもとでは、ブルジョアジーの利益に役立ち、人民大衆を階級闘争からそらす。」

「民族は、他民族の領土を獲得することによって自己の領土を拡大しようとし、したがってそのイデオロギーは、民族主義と民族間の憎悪である。」

「民族的区別は、階級的区別よりもはるかに強靭に、長く維持される」

以上は、様々な民族問題の定義であり、この問題に関するソ連の理念はスターリンにある。スターリンは「マルクス主義と言語学の諸問題」において、

「社会主義での民族主義の残存物は、諸国民の間の友好と国際主義の勝利の名において絶滅され、民族的抑制の残存物は、諸民族と少数民族との平等と自由な発展において一掃される。」

「民族語と地域的言語のうちの最良の要素を取り入れた新しい言語が、共通な国際語となる」と述べている。そしてこんな言葉も出てくる。「われわれは、祖国の勤労大衆を民主主義者や社会主義者の意識的な生活にひきあげるために、活動しているのである。」

「帝国主義段階の資本主義のもとでは、ブルジョアジーは、もはや民族的利益の擁護者ではあり得ず、決定的に反動的となり、民族の利益を放棄し、民族の裏切りに移行する」

「帝国主義ブルジョアジーが、民族的裏切りに転化するにつれて、民族的利益の擁護、民族の解放がプロレタリアートとマルクス主義政党の任務となる。」

理念と現実は、如何に乖離しているか、民族問題を取り上げて、ソ連社会主義の恥部を再度思いかえしてみた。


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