定年後の読書ノートより

グローバル資本主義の物語-その発展と矛盾-倉田稔著、NHKブックス
今一番知りたい現代社会の急速な変化を、遠い将来も見据えた視点で歴史と経済の立場から書かれた本であり、これからも何度も読み返したい本でもある。

資本主義の歴史を産業革命以降、太い輪郭で、世界的規模で描いている。氏はホブソンの帝国主義理論に基き、巨大資本が世界市場を投資対象として蹂躙していく過程を、リアルに、大胆に描く。

産業革命から現代社会まで歴史を簡潔に綴る。何故社会主義は崩壊したか、何故無謀な戦争が繰り替えされるか、何故日本はアメリカに蹂躙されているか、何故後進国の犠牲の上に、先進国の繁栄が続くか、その政治的、経済的背景をリアルに、大胆に描き出している。

あらためて、ロックフェラー、モルガン、ロスチャイルド等アメリカ巨大財閥が政治を動かし、経済を動かし、飽くなき利潤追求を追い求める姿を知って息をのむ。日本がこれまでアメリカべったりで、自らの貴重な経済的機会をさえ、アメリカに奪われて来た経過を知り怒りを実感する。

我々には、現代の社会が見えにくくなっている。「賃労働と資本」「共産党宣言」「反デューリング論」「資本論」「帝国主義論」を1、2度読んだからといって、社会の動きは見えて来ない。しかし少なくとも、倉田さんのこの本をじっくり読めば、「ああ、そうだったのか」と現代世界が納得して見えてくる。

景気の変動が大きい程、巨大財閥をますます太らせていく過程が見えてくる。大真面目に振る舞う、日本政府の、何が景気対策かと叫びたくなる。労働者階級は何故国際的団結をもっと進められないのか、怒りを感ずる。

そして最後に、アメリカ巨大財閥が支配する現代資本主義社会を、そしてまた後進国の犠牲の上に、毎日の豊かさを謳歌している我々先進国労働者はこれから如何に生きていくべきなのか、この現実的課題を深く考えさせる1冊でもある。

著者、1941年生。慶応経済博士過程卒。現小樽商大教授、オーストリア留学。

「金融資本論の成立」(青木書店)「ハブスブルク歴史物語」(NHKブックス)

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