定年後の読書ノートより
「方法序説」、デカルト著、三宅、小池共訳、デカルト著作集、白水社
デカルト(1596〜1650)は近代哲学の祖といわれる。デカルトの文章は読みやすいが、しかし哲学的難問が立ちはだかり、さっと通読するという具合にはいかない。

デカルトの方法序説とは、カトリック教会によるガリレオ異端誓断に衝撃を受け、宇宙論発刊をたじろぎ、あらためて自分が理性に至った方法を体系化したもの。この時代背景を先ずきちんと認識すること。近代哲学はデカルトからスピノサ、ライプニッツの流れを大陸合理論、デカルトからロック、バークリー、ヒュームの流れをイギリス経験論、デカルトからパスカル、キルケゴール、ニーチェ、ハイデガー、サルトルの流れを実存主義と体系化されている。自分はこれらの哲学者の古典を殆ど読んだことはない。「方法序説」を契機に古典を勉強し、人間はどのようにして神から解放されたかを知りたい。

「方法序説」は全6部からなる。一番重要で、難しいのは第4部である。第4部はいつの日か、フランス語原文できちんと読み直してみたい。言葉が易しいとつい表面を滑ってしまい、内容を深く考察していかないからいけない。

第1部

学問の中で、自分に確かな満足を与えてくれたのは数学であり、論拠の確実さと明白さ、基礎の確かさがある。

第2部

自分自身の論理は、次の4つにしぼる。

  1. 本当だと明白に認識しない限り、本当とは受け取らない。
  2. 問題は常に小部分に分散して解決する。
  3. 単純なものから、複雑なものに順を追って解決する。
  4. 見落としがないかと確証を得ること。

第3部

幸福に暮らせる為に、次の4つの格率を作った。

  1. 穏健で行き過ぎはしない。
  2. 一貫した行動をとる。
  3. 世間の秩序を変えるより。自分の欲望を変える方を選ぶ。
  4. 自分の決めた方法で、真理の認識に努める

第4部

「方法序説」の哲学的思索は、この第4部に集約されている。

  1. 少しでも疑いを含むと想像されるものは、しりぞける必要がある。
  2. 感覚というものは疑わしい。ということは、すでに確証済みといえども、疑いしりぞける必要あり。
  3. これまで自分の精神に入り込んできたものも、「本当ではない」としりぞける必要あり。
  4. 「自分は考える。だから自分は有る。」これは真理である。この真理は哲学の第1の原理と名づける。

“ Je pense , donc je suis. "

ここから以後に展開されるデカルトの論理に自分は素人ながら異議ありと実感した。自分の考えは●印で列記した。しかし世の哲学者は、ここから展開される論理を近代哲学の第1歩としている。

  1. 自分の体、世界、場所がないと仮想することは出来ても、自分がないと仮想することは出来ない。
  2. 自分が考えることを止めたら、自分が有ったという理由はなくなる。
  3. ということは、自分はひとつの実体であり、その実体の本質は、考えることだけにつきる。
  4. 実体は場所を必要とせず、どんな物質的なものにも依存しないことを認識する。
  5. 従って魂と体とは別なもので、体より魂は認識しやすい。

ここで列記されているデカルト哲学に対する私の素朴な疑問

  • 自分が存在するという第1原理は、人間は行動し、行動を認識できるから自分は存在すると把握すべきだ。
  • 実体の本質は考えることだけではなく、実態の本質は自己認識活動と共に、行動する動物であるという存在を認識すべきだ。
  • 実体とは、体と別の魂なるもに定義つけているが、定義つけによる論理のスリカエであり、これ以降の理論の展開に全面的に異議あり。

デカルトの実体=魂なるものの思索はさらに続く

  1. 自分の有が完全無欠でないことを知っているのは、自分の中に完全なものを探す本性がありからであり、それをひとことで言い表せばそれが神である。
  2. 自分の中に完全無欠な神があり、欠けている自分を導いてくれる。
  3. 神は完全無欠であり、世の有は神に依存している。それは幾何学における論理上の前提条件の如き抽象的であるが、確かなことなり。
  4. 神を認識しない人は、感覚だけに頼っている人であり、自分で努力しないから何も見えないのだ。
  5. 感覚だけに頼る人に申し上げたい。夢の世界に対する不確かな疑いに、貴方は何も答えられない。その理由を自問しなさい。
  6. 私達のうちにあるもの、すべての有は神に由来する。すべての実在は神に由来する。疑わしいと思うこと総て、それは自分が欠けているから。
  7. 起きていても、眠っていても、自分達は完全無欠ではない。理性は本物を告げることは出来ない。完全無欠なのは神だけであり、そう考えると、夢の世界に対する不確かな疑いも総て解け去る。

第5部

デカルトの世界論展開。<光について><機械><自然><人体><精神>について、えんえんと述べられる。

第6部

デカルトの世界論について、発刊するに到った理由。デカルト曰く。私は人生に非常に役立つ知識に到達した。この考えを正しく理解してくれる人を期待すると。

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