面白かったこの映画

博士の愛した数式   原作 小川洋子   小泉尭史監督     寺尾聰主演

高校数学の新任教師、吉岡秀隆が初々しく教壇に立つ。

 

「僕はルートという名の新任教師です」。ルート先生は突然、素数、約数、完全数の不思議な魅力を語り始める。生徒たちは全員 先生の話に惹き込まれる。「面白い、もっと話して」。

 

先生は母子家庭の少年時代から語り始める。10年も昔のこと。母は人材センターに登録した家政婦。ある日、特殊な雇主を紹介された。たった80分間しか記憶が保てない、ひとりの独身数学博士。母は博士宅を訪れる。博士の義姉は、暗い過去を匂わせる。隠された過ち、世間から隠れるように身を潜める2人。薪能の夜、博士は頭を、義姉は足を交通事故で傷つけてしまった暗い過去を持つ。冷たい義姉の毅然とした後ろ姿に、語られない過去が匂う。

 

翌日から母は喜々として博士の世話に出かけた。博士は最初からオカシナ質問で母をびっくりさせる。「貴女の足は何センチですか?」「24です」「素晴らしい、24ですか。4の階乗です。24とは素晴らしい。1*2*3*4=24 1から順に掛け合わせるとちゃんと自分の数になる。24とは素晴らしい。4の階乗ですよ。美しいでしょう?」。

 

博士は書斎に閉じこもる学者人間だが、なんともいえない誠実な人柄。博士の会話はすべて数学を通して語られる。親子はすっかり博士のフアンとなる。博士からルートというあだ名をつけてもらった吉岡少年。3人は親子の如く、満たされた毎日を迎えるようになった。

 

母のあまりの献身的な世話に博士の義姉は、解雇を言い渡す。入ってもらいたくない義姉の世界に 母は足を踏み入れてしまったのだ。しかし、再び人材センターから母を名指した博士の意向が伝えられ、母は再び博士の面倒をみる。相手を思い合う3人の幸福な生活がまた始まったのだ。 

 

母と義姉の間に深い理解が生まれたのだ。相互理解のきっかけとなったのは、博士が愛した一つの数式を博士が無言で示したことから始まる。

 

           еiΠ + 1 = 0

 

   (上記博士の愛した数式とは、オイラーの公式 eiΘ=COSΘ+ISINΘ

     の式にΘ=Πを挿入した時の値で、オイラーの数式と言われている)

 

こんな美しいものは、この世にはありません。永遠の美です。人間のあらゆる葛藤も、この美しい数式の前に、すべて解消してしまいます。言葉こそ無言だが、博士の目からは数式に対する優しい愛情が伝わってくる。

 

博士がこの式にこめた思いは、やがて吉岡少年の人生を決めることになった。数学に生きようと。

 

ここでルート先生の話は終る。数学に対する不思議な魅力が教室中に広がった。

 

ラストシーン。すでに老境に入った博士と義姉と母。海岸でキャッチボールする博士とルート青年。美しい4人の人間関係は、博士が愛した数式の如く、相手を思いやり、その背後に美しいバランスが光っている世界そのものだった。

 

 

 


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