嗚呼 満蒙開拓団  エキプ・ド・シネマ35周年記念作品

製作 自由工房  製作 工藤 充  演出 羽田澄子  2008年 日本映画

名古屋シネマテークで観た。印象に残るドキュメント 映画だった。羽田氏のナレーションが良い。広大な中国東北部の田園、日本の狭い田畑の印象を吹き飛ばす。

昭和20年8月、ソ連参戦。中ソ国境近くの開拓民婦女子は、突然の殺戮の中で逃げ惑う。人々は、関東軍がいるとされていた「方正」に向けて数十日の脱出行を決行する。途中 多くの人々が死んだ。そして、「方正」には日本人の死体の山が出来た。


戦後、周恩来はここに日本人墓地を築いた。今、この墓地を訪ねる日本人遺族は、あの地獄の日々に涙し、悲惨な窮地に追い込んだ大日本帝国に激しい怒りを胸にする。


幾つかの事実に驚かされる。関東軍は、20年5月密かに、最前線を朝鮮半島までに縮めていたのに、現地開拓団にはこんなことは一切知らせず、敗戦直前まで、どんどんと日本人を開拓団として中国国境最前線に送り込んでいた。しかも、現地に残すのは婦女子ばかりで、男子はごっそりと現地徴兵として軍に持っていかれ、大半の男達はシベリアで死んだ。


「方正」に向けて何十万の満蒙開拓団避難民達は殺到した。しかし、彼らには、食うものも、着る物もない、悲惨なる避難民達。しかし、満州鉄道には、銃剣をつけた日本軍が配備、軍属だけを最優先にして、追いすがる避難民を引き払い一路日本へ脱出した。残された、満蒙開拓団避難民は、迫り来る冬の厳しさのなかで、飢えと不衛生のもと、発疹チブスの伝染で次々と死んでいった。


この悲劇なエピソードから、自分は、何故か、安倍晋三の憲法改正の演説顔が目にちらついてしょうがなかった。あいつの主張する国家権力とは、敗戦の混乱下、さっさと自分達だけ列車を仕立てて最前線から撤退していく大日本帝国陸軍であり、群がる避難民を銃剣でおどし、軍属だけを脱出させた国家権力そのものの軍隊再現こそが、憲法九条の復活であり、その旗を持つ安倍晋三の何とも腹が立つあのしたり顔。


映画では、モチロンそんな場面は一度も出てこない。憲法擁護のスローガンも決して前面には出ていない。あくまで、淡々と戦後の悲劇が綴られている。しかし、観ている自分は、避難民を見殺しにして、避難列車を仕立て、脱出していった大日本帝国陸軍の国家権力をどうしても、許すことは出来ない。


安倍晋三は、その内にまた憲法九条改正を持ち出して来るだろう。ちきしょう。避難民を見殺しにして、脱出していった大日本帝国陸軍を絶対に再登場させてたまるか。


この映画を観た午後、早速「ピース愛知」へ行って戦争とは何かを考えた。

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