定年後の読書ノートより
読書術、加藤周一著、岩波現代文庫
本は楽な姿勢で読むのが最高。寝て読めば良い。「正しい」姿勢など、意味のはっきりしない「正しい」という決め付けには、あまり長くかかわらぬほうが、時間の経済というものでしょう。

本にはゆっくり読むべき本がある。教科書をゆっくり読んでおけば、後の専門書は早く読める。古典もそうだ。西欧の古典は聖書。東洋の古典は論語。現代につながる問題を考えるには、マルクスの本は古典としてきちんと読んでおくこと。生きるという問題と真剣に向き合ったとき、古典は素晴らしいものを読む人に与えてくれる。社会の表面を忙しく追い求めていくよりも、そこから目をそらせて、基本的な社会の構造、動き方を理解しておいた方が、長い目でみれば、時間の経済になるでしょう。算術的訓練は代数の習得によりたちまち無用の長物になる。

読書の愉しみは、ひとりでできる愉しみです。設備は要らず、出かけるには及ばず、他人と相談せず、気のむくままに読んでいれば良いのです。貧富の差などなんの問題でもなく、いつでも、どこでもこんな便利な娯楽はめったに有りません。

夜となく昼となく時間を選ばず、体力を選ばず、歳をえらばず、疲れているときも、元気な時も、いつも本は読めます。こんなに安くて、便利な愉しみを知らぬ人がいるとすれば、その気の毒な人に同情しなければなりません。

読書の愉しみは、知的好奇心の無制限な満足でしょう。いくらでも、無限に多くのことを知ることが本によって出来るのです。読書の愉しみは無限です。

人生は短し、面白そうな本は多し。

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