定年後の読書ノートより
世界経済診断。西川 潤著、岩波ブックレット
21世紀当初の数十年間の動きをキーワードを中心に予測する。テーマは経済のグローバル化と意識のグローバル化である。その背景には、多国籍企業と地球市民意識があり、@アメリカの一人勝ちA三極分立B地域連合からなる世界を見極める。こうした背景は、2030年世界人口82億人を想定し、食料、環境問題を見通したもとでの貧しさと豊かさの観念を再吟味せねばならない

年頭の主要新聞各社社説にもある如く、国民国家枠の国境を超えて地球規模で展開する多国籍企業による経済のグローバル化が主要な原動力である。生産資源を世界に拡散、情報通信技術の発達は市場圏内での戦争回避力を高めてはいるが、ヒエラルキー的な世界秩序を生み出す原動力となる多国籍企業。今や海外運用資金は7兆ドルを越し、アメリカGNPに匹敵している。ヘッジファンドは、数十億ドルの資金で、数千億ドルの投機を可能とし、カジノ資本主義となっている。富む者は益々富む世界、これが経済のグローバル化である。

かって多くの戦争の推進力となってきた、国民国家帰属意識、アイデンティティは人類全体への帰属意識へと替りつつあり意識のグローバル化が進んでいる。人権意識、社会的弱者の立場強化、世界的な市民の水平的な連携、すなわち地球市民化が進みつつあり、そうした意味でアジェンダ21行動計画にある地球環境問題への地球規模での働きかけは将来の主要な動向となろう。こうして経済のグローバル化と意識のグローバル化の相互チェックが進行し、その動きいかんでは、21世紀始めの数十年間の世界秩序が大きく変っていこうとしている。

アメリカの一人勝ちシナリオは、アメリカへの世界資金流入、情報通信革命、移民積極策による国内競争激化、消費支出、民間投資の増大による好景気維持が支えられている。しかしベトナム戦争以降、アメリカが「世界の警察官」たり得た時代は終り、世界は「バックス・コンソルティス」(先進国同盟による平和維持)の時代に入っている。経済面でのアメリカひとり勝ちの世界は、政治面では必ずしも維持され得ない。

アメリカ、EU,日本による3極分立シナリオは3極それぞれ独自の利害関係による、経済摩擦を起している。しかしかっての帝国主義時代とは本質的に違う。相互乗り入れの比重は高い。後進国側での経済依存の多角化も進んでいる。基軸通過による経済グロック化も難しい。すなわち先進国間の相互交流と発展途上国の位置増大により、世界が3極分立する状態にはない。

時代の動く方向は、諸地域の連合からなる世界秩序と考えられるが、国境をこえる諸関係の拡大、交流、地域形成が進もう。各国で始っている地方分権、権限委譲は進み、地域おこし、人材養成が進み、文化伝統に自身を持つ内発的発展の気運が高まろう。先進地域と周辺地域の経済交流、資本、技術、人材、資源交流がすすみ、経済覇権秩序も崩壊する。地域連合の形成は、市民社会の台頭や多文化世界の進展とあい呼応して、世界が資本蓄積=経済成長という一元的価値観から解放されて、多文化共存、内発的発展に勝ちを見出していけば、地域連合もすすみやすい。しかし反対に、西欧キリスト教世界を頂点とするヒエラルキー的秩序が支配的体制で有り続ける場合には、地域対立、文明衝突もありうる

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