定年後の読書ノートより
シルクロードの朝鮮人、金賛汀 著、情報センター出版局
読み終わってこの本の発行年月日を確かめた。1990年12月発行、ソ連崩壊寸前。正直、自分が知りたいのは、ソ連崩壊後のシルクロードの朝鮮人である。

この春、JICAの仕事でタシケント、サマルカンド、ブハラを3週間訪問した。そこでは多くの紡績工場を見学した。しかし、今ウズベキスタンで一番近代的で、頑張っているのは、韓国甲乙紡資本のカブールテックス30万錘である。カブールテックスには多くの韓国人技術者が常駐し技術指導しているが、すでにウズベキスタンから韓国に500名以上の従業員が研修に出かけている。従業員の大半は言うまでもなく本書に出てくるシルクロードの朝鮮人である。

ウズベキスタン国内に走っている新車はすべて韓国自動車資本DEAWOOの最新製品ばかり。タシケントには日本料理店はないが、韓国料理店は幾つもある。タシケントでは韓国料理は高級過ぎて庶民には手が届かないと誰もが言っていた。

ウズベキスタンの経済は今や韓国資本を抜きにしては語れない。ウズベキスタン大統領も韓国を訪問し、韓国資本のウスベキスタン投資を切望しているし、今やウズベキスタンにとって、経済活性化の鍵は韓国にありとも言われている。ソ連崩壊前後でシルクロードの朝鮮人の立場は大きく様変わりしてきている。

この本を読んで、自分自身が密かに感じたこと。

スターリン時代は過日岩波世界歴史講座28で学んだ内容そのものだった。ソ連極東内務人民委員部長官リュシコフ証言もまた、岩波講座の記述に間違いないことを実証している。「社会主義ソ連」に、もうコレッポッチの幻想を抱いてはならない。しかし、そうは思っても、もし恐怖のスターリン時代が無かったとしたら、もしソ連指導部のあのような歴史的誤りが無かったとしたら、我々はどれほどソ連に親しみと憧れを持つことが出来たであろうかと思うと残念でならない。尾崎秀実は、社会主義の未来を信じて、ソ連に全てを捧げて死んだ。もし、ソ連が尾崎の期待に応えられるほど、正常で堂々と社会主義建設が進められていたならば、後世何十億の人民は社会主義の未来に憧れて、先輩ソ連を長く尊敬したであろうに。

ソ連は社会主義とは縁もゆかりもない国であった。スターリン時代の恐怖の真実を知ったら、ソ連国民は自らのモラルから、国の政治をひっくりかえすのは当然だ。ソ連の失敗は、独裁者スターリン個人に原因が負わされる性格のものなのか、それともマルクスの構想した社会主義システムそのものにすでにスターリンを生む宿命的問題点が内在していたのか、今の自分にはまだ全然判らない。

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