定年後の読書ノートより
日本文学史序説―終章―加藤周一著、平凡社
最近高校歴史教科書も現代から出発しようという議論がある。この度の加藤氏の膨大な日本文学史序説も終章から入らせて頂く。

終章 戦後の状況

  • 戦争体験について

敗戦は非軍事化と民主化をもたらした。しかしなお自らの手で市民革命を経た西欧諸国に対し上からの権力で動いた日本は本質的に違う。それは国民の知的動向にも現れる。平等主義の普及、アメリカの影響を主な特徴とした戦後最初の15年間は、日本人の国外文物への知的好奇心は強かったが、経済復興を成し遂げたその後の15年間は、西洋知的遺産への関心は薄らいだ。この傾向はドイツとは対照的だ。

日本型ファシズムの自己理解で丸山真男「現代政治の思想と行動」が優れている。戦争責任者は誰なのか特定出来ない日本のシステムを明解にし、丸山は、国家の指導者が彼等の決定について責任をとらぬという、体制そのものに内在する日本型ファシズムの特長を解析する。

注目すべき作品;大岡昇平「俘虜記」「野火」「レティ戦記」野間宏「真空地帯」井伏鱒二「黒い雨」太宰治「斜陽」「人間失格」

  • 「第2の開国」について

鶴見俊輔は、「思想の科学」でアメリカ30年代自由主義者左派の流れを日本に移植した。竹内好は魯迅を通して中国を見、中国をとおして日本近代史を見た。

注目すべき作品;森有正「バビロンの流れのほとり」木下順二「子午線のまつり」竹内好「中国の近代と日本の近代」堀田義衛「インドで考えたこと」「広場の孤独」小田実「何でも見てやろう」

  • 高度成長管理社会について

経済的膨張は農業人口減少、労働者の中産階級化、権力機構の安定を生み、アメリカ追従は高度管理社会の反発を招き、社会体制の潜在的は不安定性を常時孕んでいる。こうした中で作家の世界の密室性とは私生活上の心理と美意識に関心を集中すること。

注目すべき作品;安岡章太郎「アメリカ感情旅行」三島由起夫「仮面の告白」司馬遼太郎「坂の上の雲」安部公房「砂の女」石牟礼道子「椿の海の記」荒正人「近代文学」井上ひろし「しみじみ日本、乃木大将」大江健三郎「広島ノート」「沖縄ノート」

ここをクリックすれば、読書ノートの目録に戻れます。