定年後の読書ノートより
日本文学史序説―第11章工業化の時代―加藤周一著、平凡社
第11章、工業化の時代
  • 1885年の世代

工業化の進んだ時代。天皇制官僚国家の安定とアジア大陸に対する膨張主義的傾向。1910年日韓併合と大逆事件、1915年対華21ヶ条要求と1918年シベリア出兵、米騒動、1925年普通選挙法と治安維持法。

志賀直哉、谷崎潤一郎、木下杢太郎、北原白秋の関心:生涯を通じて、個人の感情生活や、美学や、文化の伝統に没入し、日本社会の構造や機能に関心を持つことなし。石川啄木、時代閉鎖。斎藤茂吉、衝動的な激情

  • 谷崎潤一郎と小説家たち

谷崎の世界は抽象的、何故、陸軍は細雪を禁止したか。谷崎の作品は軍国主義批判ではなく、軍国主義不在であったから。志賀直哉は日本の土着世界観と美学を体現していった。部分からの出発。絵巻物、純日本製の世界。

  • 木下杢太郎と詩人たち

木下杢太郎、医者、科学者、芸術家。萩原朔太郎「旅上」「月に吠える」北原白秋「邪宗門」情緒的で知的要素含まず。

  • 1900年の世代

マルクス主義と大正教養主義。野呂榮太郎「日本資本主義発達史」マルクス主義は歴史社会全体に対する科学としての位置付け。山川均、社会主義者が労働運動の中へ。福本和夫、少数精鋭主義。

  • マルクス主義と文学

野呂榮太郎「日本資本主義発達史」の意義、日本近代史を、資本主義発達史として、包括的に著述した。小林多喜二、小説によって権力の実態を明らかにした。しかし、登場人物と作者との間には知的距離がない。宮本百合子、自覚的に彼女自身の人生を送った。作者その人の生涯を、直截に題材にすることによって、まさにその生活の独特の内容によって、小説の世界を机上した。

  • 芥川竜之介と文学

絶えずマルクス主義を意識していた芥川竜之介。国家を意識するよりも、彼は階級を意識していた。芥川以降、大正デモクラシーを文学の領域でものにしたのは、大仏次郎「鞍馬天狗」吉川英治、歴史的題材を通俗的に扱うことに巧み。川端康成。彼にとって女は常に視覚に、触覚に、あるいは聴覚に対する美の対象であった。

  • 外国文学研究者と詩人たち

日本における西洋の文学研究が国際的水準に達したのは、渡辺一夫に始る。「ガルガンチュアとパンタグリマルの物語」16世紀のフランス思想の研究は渡辺自身の思想的立場と密接不可分。宗教戦争とユマニスト、不寛容に対する寛容。宮沢賢治「農民芸術論」中原中也「山羊の歌」「在りし日の歌」

  • 3つの座標

林達夫、大勢に順応拒否。自己貫徹。石川淳、マルクス主義に一定の距離。小林秀雄、抽象的な概念の体系に具体的な生活感覚を対置。社会科学に美学を対置。

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