定年後の読書ノートより
読書は喜び、向坂 逸郎 著、新潮社
  • 蔵書のこと

向坂先生東大助手時代文部省留学生として第1次大戦後インフレ下のドイツに留学中、膨大な社会主義文献を収集。その数6万冊に及び、今や世界的な資産になっている。氏はこれらの蔵書を安全に保管し、将来の世代に遺したいとこの度すごい書庫を建てられた。書庫はトーチカの様に頑丈で、がっちりしている。是非いちどその写真を拝見したいと思う。

  • 古典を読むべし

社会が大きく変ろうとしている時、人々はほんとうのことを追求せずにはいられない。福沢諭吉は古典を実に読んでいた。古典といわれる人類文化の深所から学んでいた。今日は良い本が誰でも手に入る。1日24時間しかないのが残念である。マルクスが、どんなによく古典を読んでいるかは「資本論」をちょっと繰ってみただけでもすぐ判る。流行の本を追いかけるより、流行の彼方にあって威力を持ち続けている本を読むように心がけるべきである。古典とはそういうものである。

  • 生活に生きる古典

古典とはマルクスの「資本論」、ダンテの「神曲」、ゲーテの「ファウスト」等の本をいう。このような本は常に進歩的である。古典は歴史の進歩的な局面に進歩の役割を果たしてきた。ここに古典を読む意義がある。私は「資本論」を読み、その思想の上に立って生きてきたことを、この上もない幸福と思っている。「資本論」は、ただ経済学の書であるだけでなく、人生の書である。人間の動く様が、資本主義というわれわれの生きている社会の中で示されている。「資本論」には深奥に達する人間洞察がふくまれている。「資本論」はむろん科学の書である。資本主義の中で動いている人間が意識すると否とにかかわらず、一定の統一ある運動をする。資本主義には一定の運動法則がる。資本主義を動かしているこの社会の根本法則を知らないで、これを克服する行動はつねに無駄におわる。歴史はこのことをよく教えている。

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