定年後の読書ノートより
トルストイ作家論(外国編)トルストイ研究、全集別巻、河出書房新社
ロマンローラン等7名のトルストイ論の中で、ローザ・ルクセンブルグとレーニンのトルストイ論が印象深い。

社会を思索したトルストイ;ローザ・ルクセンブルグ著(1871〜1919)

天才的な小説家トルストイのなかには、最初から芸術家とならんで社会思索家が生きていた。トルストイは彼の著述の中で、マルクスの理論は巨大なあやまりと断じていた。彼は現代の労働運動に対し、何の理解も示さなかった。

しかし彼の社会主義拒否の姿勢は、彼の知性の強さによるものであった。彼の思考の重点は、既存のものの批判におかれた。しかしトルストイは同時に純粋な理想主義者であった。トルストイの社会的理想は社会主義以外のなにものでもない。彼の興味ある視点は「芸術とは何か」に現れている。

曰く、現代の芸術が民衆にとって不可解であるのは、民衆の精神的粗野にあるのではなく、既存の芸術が誤っていると説く。真の芸術は太古の時代存在していた。しかし、社会が搾取されている大衆と少数の支配者にわかれて以来、芸術は金持ち人間の感情を表現する手段に奉仕している。真実の芸術に到達するには、芸術は支配階級の表現手段から再び民衆の表現手段に戻さねばならない。

トルストイの弱点は、彼の歴史的観点の原始共産主義と社会主義的未来を結合する歴史的必然性をとらえることなしに、階級社会を単に誤りとしてとらえたところにある。トルストイはこうした視点から、社会主義の偉大なユートピア主義者、サン・シモン、フーリエ、オウエン等の先駆者の列に加えられる。

ロシア革命の鏡としてのレフ・トルストイ;レーニン著(1870〜1924)

トルストイを革命と対比するのは作為的にみえるかも知れない。しかし偉大な芸術家は、その作品の内に、革命の本質的な面の多くを反映する。ロシア生活の比類ない反映、社会的な虚偽と欺瞞にたいする力強い辛辣な抗議、資本主義的搾取の仮借なき批判、ありとあらゆる仮面の剥奪、トルストイの見解は、家長制的なロシア農村で生み出された矛盾である。まさに農民的ブルジョア革命としてのロシア革命の特殊性を表現している。トルストイの作品は、ロシア農民のおかれている矛盾の真実の鏡である。

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