定年後の読書ノートより
戦争と平和(第3巻第3部)、トルストイ著、中村白葉訳、トルストイ全集
第3部始めに、歴史の運動法則について、トルストイの視点が述べられる。亀にアキレニウスは追いつけないという詭弁の間違いはどこにあるか、運動の単位をしだいに小さくしてゆくことによって、問題の解決に近づいてゆくだけで、解決には到達出来ない。幾何級数の和を求めて、始めて解決に到達出来る。歴史も同じ。歴史の連続運動の中から、任意の一連の事件を取り上げても意味がない。一人の歴史的人物の行動に人々の恣意の総和が表現されているわけでもない。微分と積分が大切。歴史の研究は民衆を動かしている微少な要素を研究せねばならない。

撤退するロシア軍と進撃するフランス軍、ボロジノ会戦は事態を変えるわけではなかった。フランス軍がロシア奥深く入り過ぎたと例え気づいたとしても、惰性そのものをどうすることも出来ない。エレンはピエールと別れ、老将軍と一緒になる道を選んだ。ロシアの諸情勢からこうした方が有利であると気づいたのだ。戦場から戻ったピエールは、戦争と神の問題を考える。モスクワは不穏な空気の中にあった。ピエールの身の回りにも危険は迫ってきた。しかし観念の世界に妄想するピエールはモスクワ脱出を決意出来なかった。ロストフ家伯爵一家モスクワ脱出に際してはナターシャは先頭に立って指揮を執った。多くの負傷者を馬車にのせてモスクワを脱出した。その中にアンドレイ公爵もあった。奇跡的なアンドレイ公爵とナターシャの再会。そこには神の意志がはっきり見えた。ナポレオンは抜殻荒廃のモスクワに唖然とする。市内の混乱の中に突然発生した大火事。フランス兵略奪の中をピエールはナポレオン暗殺に出かける。女を襲おうとしたフランス兵をなぐり倒したピエールは不穏分子として独房に閉じ込められ、軍事裁判を待つ身となる。第3部はここまで。

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