定年後の読書ノートより
戦争と平和(第4巻第1部)トルストイ著、中村白葉訳、トルストイ全集
テーマは死。銃殺刑として刑場に引きだされたピエールの前には、恐怖だけが恐ろしく迫る死があった。ピエールは考えたり判断したりする力を失った。彼ができるのは、見ることと聞くことだけだった。頭にはひとつの願いしかなかった。それは何かおそるべきことが、どうせさけられぬなら、早くすんでくれれば良いという願いだった。しかし銃殺1人前でピエールは死刑を放免され、捕虜として、再び囚われの身となる。

ロシアが侵略され、モスクワがナポレオンの手に落ちた歴史をトルストイはこう評価する。もろもろの歴史的事件に見られるもっとも顕著な教訓は知恵の木の実を食べてはならぬ、歴史的事件において役割を演じているものは、それを理解しようと思えば、その無益なことに驚くだけであると。

ニコライ・ロストフは公爵令嬢マリアに再会、真実の愛を予感する。一方奇しくもアンドレイ公爵と再会したナターシャは彼の介護に全力を尽くす。そしてその知らせをニコライから受けたマリアは2週間をかけて兄の元へ。

アンドレイは死の床にあった。ナターシャは3日前突然柔和になった彼の病状変化から死が訪れたことを予感する。そしてアンドレイは、「死は目覚めである」と夢で知る。彼は経験したことのない身の軽さを実感する。「扉は向こうから押された。人間の限界を超えた最後の努力も空しく、扉は左右に音も無く開いた。それが死であった。」アンドレイ公爵は死んだ。

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