定年後の読書ノートより
経済成長がなければ私達は豊かにはなれないのだろうか、ダグラス、ラミス著、平凡社
昨年9月11日NYテロ事件に関するダグラス、ラミス氏の講演は印象的だった。事件直後の講演にも関わらず、氏はアルカイダービンラディン一派は、アメリカ帝国主義への必死の抵抗運動ではあるが、しかし彼等はそれぞれの国の支配階級出身という出自から、そこには抑圧された人民に足場をおいた真実の抵抗勢力には成長出来ない限界があるとの時局診断の見方は、アメリカ社会学者としてもすごい卓見だと今も忘れられない。

次にダグラス、ラミスさんに接したのは正月のいくつかの朝日新聞論説記事の中で、ひときわ目立ったのは、「がらくた経済からの脱却を」と題する短い時評だった。人はどうしてガラクタを手に入れる為に、自分を忘れて働き過ぎるのかという警鐘は、読む人の生き方そのものを揺さぶる大論説だと思った。

ダグラス、ラミスさんと3回目に出会いは、過日読んだ堀切和雄氏の角川新書「ゼロ成長幸福論」の中で、堀切氏はこの「経済成長がなければ私達は豊かにはなれないのだろうか」という長いタイトルの本を読んで、堀切氏自らの生き方に大きな自信を戴いたと感動の読後感が寄せられていて、自分も早速この本を探し読みたいと思った。

しかしこの本はすでに殆どの大きな書店では売り切れていた。それだけにこの本を店頭で発見した時は嬉しかった。

勿論、早速この長文のタイトルの小さな本を読み始めた。毎日枕元に置いて、何時も最初の1ページから読みはじめ、共感と悦びと、感動の充実感とですっかり良い気持ちにしてもらい第2章末まで到達せずして眠ってしまう。

そして本日、やっと購入1ヶ月にして最終章まで読み通すことが出来て嬉しい。

この本を読むと、何故か心が落着く。自分が言いたい、呟きたいと思っていることが、実に率直に書かれていて安心する。心が落着く。気持ちが豊かになってくる。そして満足感に満たされ、何故か眠くなる。この本を読むと、ああ、自分の今生きようとしている方向は、これで良いのだなと自信が湧いてきて、安心感の為だろう眠くなってくる。

正直いって、最近若い人達のいくつかの不安定なモラルに接し、一体社会が豊かになって来たことが、本当に人間にとって仕合わせに結びついているのかといった怒りすら感じている毎日だが、この本を読んで、経済成長もひとつのイデオロギーであり、幸福論もひとつのイデオロギーであると教えられ、ああそうかと実感する。

この本は、まだまだこれから何十回となく読みかえしていくだろう。当分自分は、毎晩この本のお世話になって就寝する。この本と、そしてかって我が青春時代何度も読み返した岩波新書のW・B・ウルフ氏の「どうしたら幸福になれるか」の2冊は、自分の生涯に大きな影響を教えてくれた書として大切にしていきたいと思う。

素晴らしい本に出会えた人は、人生仕合わせだと思う。そして自分は63才にして、また素晴らしい本に出会える幸運を手にした悦びの中にある。

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