定年後の読書ノートより
ハリー・ポッターと賢者の石、J.K.ローリング作、松岡佑子訳、静山社
今読み終わった所です。すごく面白かった。こんな面白い本は久しぶりでした。全世界の人々がこの本を熱狂しているのが良く判ります。なんと言っても面白い。最初、冷やかしの積もりで、家内が読みかけの本を開いて読み始めたのですが、熱中して、とうとう家内より僕の方が先に読んでしまいました。

どうしてこんなに面白かったのかな。それは、魔法の世界が現実の世界とつながっているような、そんな感じにさせられるところが面白い。最初にマグル社会すなわち人間社会でいじめられた一人の可哀相な少年が登場してきます。シンデレラ姫のごとく、両親のいない、いじめぬかれた少年ハリーは魔法の世界では有名な英雄の子供なのです。しかしハリーはそんなことも知りません。ところが、ハリー11才の誕生日、突然魔法の世界から招待状が届きます。ダーズリー一家はこの手紙をハリーに見せまいと大騒ぎをしますがとうとう魔法の世界からの招待状をハリー少年は見てしまいます。この人間世界と魔法世界の接続が実に見事に仕上げてあります。だから読者もハリーに同情して、こんな人間社会から抜け出して、早く魔法の世界に出発して楽しく冒険してね!という気持ちになって来るから不思議です。

僕達は夜夢を見ます。しかし朝起きると、ああ夢だったかと異次元の世界と現世との別れを諦めます。しかしこの本は現実世界と異次元の世界が上手く連続しているのが楽しいのです。特にロンドン・キングズ・クロス駅9と3/4番ホームが魔法列車の発着駅という設定、実は僕もマンチェスターからロンドンへの帰りあのキングズ・クロス駅に降りたことがあります。しかもその列車も確か10番線に到着したような記憶があります。だから魔法の世界がすぐそこにあるような気がしてきます。

そしてそんな気持ちにさせられるのも松岡さんの訳が実に上手いからだと思います。僕も英文本も買ってきましたが、最初の書き出しを僕の英訳と松岡さんの英訳を比較すれば、どんなに松岡さんが名訳であるか、すぐご理解頂けると思います。この本の評判は松岡さんの訳が上手いのが大きく寄与しています。

Mr. and Mrs Dursley, of number four, Privet Drive, were proud to say that they were perfectly normal, thank you very much. They were the last people you'd expect to be involved in anything strange or mysterious, because they just didn't hold with such nonsense.

(私の訳)ダーズリー夫妻は、プリベート通り4番地に住み、お蔭様で私達は全く正常人間でありますと言い切れるのを自慢していた。彼等にとって、不思議なことやミステリーなどは有り得ないとしているし、そんなあほらしいことは知りませんとしていた。

(松岡佑子さんの訳)プリベット通り4番地の住人ダーズリー夫妻は「おかげさまで、私共はどこからみてもまともな人間です」というのが自慢だった。不思議とか神秘とかそんな非常識はまるっきり認めない人種で、まか不思議な出来事が彼等の周辺でおこるなんて、とうてい考えられなかった。

松岡さんの名訳がこの話をますます面白いものにしていると思う。

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