定年後の読書ノートより
青春と哲学への出発、福田静夫著、汐文社(1978年初版)
古本屋で福田先生の若い頃に出版された1冊の本を見つけた。福田先生に最初にお会いしたのは今から2年前、イタリア映画を観る会だった。映画を観てまず自由な団欒、その後のまとめとしての先生の話が素晴らしかった。映画とはこうやって観るものだと始めて教えて戴いた。その後、福田先生が開いておられる哲学ゼミに参加するようになった。ジョン・ダワー著「敗北を抱きしめて」を1年間にわたって読んできた。

この席で福田先生から本とはこうやって読むものだと教わった。まず、最初に本のストーリをしっかりと掴むこと。これが一番大切。次にこのストーリーの中心になっている箇所をもう一度著者の言葉で言い返し著者はここで何を言おうとしているかを確認する。通常福田先生は、大切な本は3回読みかえすと言われる。出来るだけ、著者の主張を正確に把握するために、原書で読むように心がけておられるとのこと。

この「青春と哲学への出発」では、福田先生の青春の足跡と、哲学者として、今自分が立っている現代にどう直面して生きていくべきかを若者に語りかけておられる。

青春の思い出の中に、「Hさんのこと」という短い随筆がある。名大櫻鳴寮自治会委員長として、学生運動の高波の中に自分を置き始めていた頃、一人の女子学生より、美しい貝殻の小箱を貰った。小箱の蓋をあけると、海の香りが部屋いっぱいに広がった。それから2週間後、彼女曰く。「貴方のような生き方恐ろしいわ」。学生大会で上気した福田青年にとって、この言葉は顔から血の気が引く思いだった。それから数年後、大学病院の庭で、静かな微笑を口元に浮かべ白衣を着たHさんと軽く会釈して別れる自分はかならずしも平静ではなかった。しかし、貝殻を拾ったあの海は、今大きな資本の力で汚されていく。この大きな力に、誰が抵抗していくべきか。福田青年は、Hさんと自分の人生の道の大きな距離の違いを思い起こしながらも、生きることの勇気をあらためて噛み締める。

この青春の思い出の一編は、闘う青春の日に何があったかを語る素晴らしい作品のひとつだと思った。

この「青春と哲学への出発」の中で、最も強く福田先生が力を入れて書いておられる一文をここに引用し、福田先生のマルクス主義哲学に対する情熱としたい

「哲学といってもいろいろだ。実存主義哲学、科学哲学、あれこれの宗教哲学、日本主義哲学等々。しかし、人間を人間の最高の存在であると最も徹底して主張する哲学、そして今日の疎外され、非人間化された現実から人間を解放する現実的な力が労働者階級であることを明らかにできる哲学、そして日本の人民の自由と民主主義のたたかいと唯物論の伝統を継承し、今日の日本の変革の運動にそれらを創造的に発展させている哲学、それはマルクス主義哲学(弁証法的・史的唯物論)ただ1つである」

そして、この文章に続く次の一文は、福田先生の若さそのものの叫びでもある。

「今日の日本の「青春」の未来は、日本の社会主義的変革しかない。マルクス主義哲学を学び、科学的社会主義の哲学的基礎をしっかりつかみとることによって、君の「青春」は、今日の時代の巨大さに立ち向かうりんりんとしたる勇気をわがものとするにちがいない。しかも現実の発展は、かってのいかなる時代にまして、マルクス主義哲学の飛躍的発展を要求している。君の「青春」の情熱がこの点でも大きく発揮されんことを心から期待したい。

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